「2020年度ヤング・ポートフォリオ」清里フォトアートミュージアム

「2020年度ヤング・ポートフォリオ」清里フォトアートミュージアム

名称:「2020年度ヤング・ポートフォリオ」清里フォトアートミュージアム
会期:2021年3月20日(土)〜6月13日(日)
休館日:毎週火曜日、但し5月4日は開館、3月19日(金)までは冬季休館
開館時間:10:00~18:00(入館は17:30まで)
住所:〒407-0301山梨県北杜市高根町清里3545-1222
TEL:0551-48-5599
URL:清里フォトアートミュージアム
 ■2020年度ヤング・ポートフォリオ(第26回)データ
選考委員:都築響一、金村 修、細江英公(館長)
作品募集期間:2020年4月15日~5月31日
応募者数:161人(世界16カ国より) 応募点数:3,876点
購入者数:18人(国内6人・海外12人 /6カ国)
     日本/マレーシア/中国/韓国/台湾/ポーランド/ロシア
購入点数:143点(全作品を展示いたします)
●1995年度から2020年度までに作品を収蔵した作家の総数:816人(46カ国)
「2020年度ヤング・ポートフォリオ」を年3月20日(土) ~ 6月13日(日)まで開催
東欧からアジア、日本まで、2020年度収蔵作品143点を一堂に展示
コロナ禍を越えて青年の情熱が結集
ヤング・ポートフォリオ(YP)とは、当館の理念の一つであり、「写真を通して世界の若者を支援する」ことを目的とする文化貢献活動です。毎年、世界の35歳までの若手写真家の作品を公募し、第一線の写真家による厳正な選考を経て、 若手写真家の「原点」となる貴重な初期作品を購入・収蔵し、後世に残す活動です。 選考された作品を、美術館が永久保存するという、コンテストと異なる性格を持つ本活動は、世界でも他に類をみないものです。(2004年、公益社団法人・日本写真協会より文化振興賞を受賞)
YPは、当館開館の1995年度より継続して行っており、2020年度は第26回となります。これまで世界77カ国からのべ10,681人より約14万点の作品が応募され、そのなかから、46カ国の816人による6,000点を超える作品を購入いたしました。
■なぜ35歳なのか ー 芸術における青年期の意義を問う
芸術家は、青年期に強い意志と情熱をもって試行錯誤を重ねることにより、才能・資質が高められ、作品のクオリティが磨かれます。研鑽を積んだ作家の多くは、おのずと30代には自己のスタイルを確立し、代表作となる作品を生みだしています。青年の原点とも言うべき作品が、表現の領域を開拓し、歴史を築いてきました。そこには永遠の輝きがあります。
■YPとコンテストの違いは?
作家の世界観や芸術性を表現するポートフォリオ(作品集)となるように、 1枚だけでなく、複数の作品を収蔵することが特徴です。また、通常コンテストの入賞は1度限りですが、YPは、35歳まで何度でも応募することができます。20代から35歳まで何度も収蔵することができれば、作家の成長を見守り、応援することが可能となるからです。
■写真家の成長とともに世界へ伸展するYP
これまで作品を収蔵してきた写真家のなかには、めざましい成長をとげ、土門拳賞や林忠彦賞、木村伊兵衛賞など内外の様々な賞を受賞する写真家が誕生し、また東京造形大学、大阪芸術大学、九州産業大学などで、後進の育成にあたるなど、多くの優秀な写真家が誕生しています。また、当館の開館20周年を迎えた2014年以降、積極的に巡回展を開催しています。
2014年:東京都写真美術館にて開館20周年記念展「原点を、永遠に。」展を開催。世界34カ国の197人(YPのみ)の作品を展示し、世界を俯瞰しながら、写真表現の多様さを展望する展覧会(約500点)を行いました。
2018年:芸術における青年期の意義を問うという理念を明確に表現するべく、再び東京都写真美術館において、「原点を、永遠に。ー2018ー」を開催いたしました。同展は、当館が収蔵する全写真家の青年期(35歳まで)の写真のみを展示したものです。ヤング・ポートフォリオの作品だけでなく、写真史における重要な作品を多数含むこの展覧会は、一部再構成のうえ、2018年6月、国立台湾美術館に巡回。同館の開館30周年記念特別展「起始・永遠」として開催され、成功裏に終了いたしました。
2021年:2021年4月~11月、米・カリフォルニア州、サンディエゴの写真美術館Museum of Photographic Artsに巡回します。「Beginnings, Forever」と題し、19世紀末の作品から21世紀のYP作品まで153点を展示いたします。
■現役写真家が作品を選考
作品選考は、当館館長のほか、YPの理念にご賛同いただいた現役写真家2名が行います。それぞれの写真家が手がける写真のジャンルは多様ですが、表現意欲の強さ、視点の明確さなどが基準となるため、担当する選考委員によって何らかの“傾向”が生まれるということはありません。若い才能に未来を託す思いで選考し、3名の選考委員全員が合意した作品を収蔵します。特に近年応募の多いロシア、ポーランドなど東欧の国々、アジアでは中国、韓国、台湾などです。世界のさまざまな地域の特徴、多様な芸術性、そして、世界の若者が捉えた<いま>を俯瞰して見ることができます。
■2020年度ヤング・ポートフォリオ(以下YP2020)の見どころ
YP2020の作品群が制作されたのは、コロナ禍以前ですが、 ヴァーチャルなモノや世界への距離感や向き合い方が、これまでとは明らかに異なる作品が多く見られます。 私たちは日々、AIによるヴァーチャル技術や、大量の写真や映像を情報源として生活しています。その一方で、目に見えない社会的なプレッシャーのなかに生きる個々の人間の心の拠り所を考察しようとする視点が多く見られます。写真家の身体感覚を通して<いま>を考える機会となれば幸いです。
●“ヴァーチャル”と生きる:苅部太郎、アガタ・ヴィオチョレック(ポーランド)
苅部太郎《Saori》
“Saori“がシリコン製のラブドールであることを除けば、被写体の男性は、人間の男女と全く変わらない生活を送っています。男性には家庭がありますが、10年前からSaoriとの生活を始め、今ではSaoriが「人生を豊かにしてくれる理想の女性」となっているとのこと。
「ヴァーチャル」とは「仮想」と思われる場合が多いのですが、本来は「事実上の」「実質的な」という意味を持つ言葉です。被写体の男性は、Saoriから「生きた心」を感じる生活を送っており、Saoriの存在は、男性が生きるうえにおいて、不可欠なものとなっているのです。写真家は、Saoriとのヴァーチャルな関係に“生きる”男性の日々をあくまでも優しく捉えています。
アガタ・ヴィオチョレック《模擬妊娠実験》他
ジェンダーと性的マイノリティに関する変化をテーマとするヴィオチョレク。本シリーズは、近年の医学とハイテク産業の交差を見据えようとするものです。ヴィオチョレクが注目したのは、「人工知能、拡張現実、ハイテク科学を採用することにより、医学の研究や学びは、仮想化され、シュミレーションや仮想経験に依拠して行くのではないか。」という現状です。ヴァーチャルから知識を得ようとする傾向はむしろ強まっているのかもしれません。
人間と非人間の“境界”とは、生命の神秘や真の幸福とは何か?二人の写真家は、いくつもの根源的な問いを投げかけています。

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