名称:企画展「受贈記念 柳原睦夫 花喰ノ器」大阪市立東洋陶磁美術館
会期:2021年8月11日(水)~2022年2月6日(日)
会場:大阪市立東洋陶磁美術館
休館日:月曜日(9月20日、1月10日を除く)、9月21日(火)、12月27日(月)~1月4日(火)、1月11日(火)
開館時間:午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
主催:大阪市立東洋陶磁美術館
入館料:一般1,400(1,200)円、高大生700(600)円
( )内は20名以上の団体料金
中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)、大阪市在住の65歳以上の方は無料(証明書等提示)
住所:〒530-0005大阪府大阪市北区中之島1-1-26
TEL:06-6223-0055
URL:大阪市立東洋陶磁美術館
柳原睦夫(1934–)は、高知市出身で、京都市立美術大学(現在の京都市立芸術大学)で富本憲吉(1886–1963)に陶芸を学びました。その後、アメリカのワシントン大学やアルフレッド大学に招聘され、1960年代から70年代にかけて数度に渡り約5年間をアメリカで過ごしました。抽象表現主義やポップアートに代表されるアメリカ美術の動向を現地で体感し、帰国後には鮮烈な金銀彩を用いた独特の造形作品で注目されます。ただし作家はむしろ「絶対に陶芸を捨てない」という意識の中で、日本のやきものの豊かな文化の連続性を否定せず、現代における新しい表現を模索してゆきます。柳原は、陶芸のおもしろさを「個人の表現としてソリストにもなれるけれども、アンサンブルがたちどころにできること」だと言います。
本展は柳原睦夫作品4点の受贈を記念し、個人蔵を加えた柳原作41点とともに、柳原の作品に華道家・杉田一弥が花を活けた写真作品16点を併せて展示することで、作家がテーマとしてきたやきものの作品性を改めて見直します。
作品をご寄贈くださいました大森敬吾氏(Museum李朝)、木村嘉子氏、杉田一弥氏、杉山道夫氏に心より御礼申し上げます。
唇のように肉感豊かに厚く作られた口縁部は、壺が笑っているかのように前に垂れ下がっています。底部は、作家が「沓形」と呼ぶ手前に張り出すかたちの名残を留め、口縁部と呼応するかのように中央が隆起して、柳原の作品がしばしば肉感的な感覚だと評されてきたことを思い起こさせます。鮮やかな青と黄色の対比によって描かれた流水文に、海底を思わせる濃いブルーのグラデーションが加わって、複雑な造形の奥行きや立体感を強調しています。
細い脚を持つ下蕪形の瓶は、上部は閉じており、側面に位置する口縁はやや垂れ下がっています。柳原はユーモラスな造語を作品名に用いており、「花喰」は、通常「花生」と呼ばれて花を引き立てるやきものが、立場を逆転させて花を食べているかのようです。また1980年代後半から作品名に見られる「オリベ」は、自由闊達な文様の織部焼を意識した名称で、かたちと装飾の融合に強く関心を持っていた作家による、独自のやきものを切り開いた古田織部の作風へのオマージュでもあります。
ポスターカラーのような強烈な黄色と、はっきりとした黒色は、日本のやきものが見所としてきた情緒的な味わいを退けるかのような色彩で、主文様と地文様が陰陽の関係で表されています。彩色後全体に透明釉を掛けて高温焼成しますが、くっきりとした境界線を出すために、作家はマスキングテープを使用して各色の顔料を均質に塗り分けています。重量を感じさせる上部は、屈曲した脚によって空間に浮かび上がり、全体の造形には生き生きとした躍動感が見られます。本作は、キ・オリベのシリーズにおける作家の代表作といえるでしょう。
作家が1970年代に使用した銀彩は、鏡のような光沢が特徴的でしたが、1990年代末頃から制作される「ギン・オリベ」では、陶芸の情緒をも逆手に取って取り入れるという意識のもとで、渋い色調の銀色と黒色、それらの境界を緩やかに繋ぐ「こすったような銀色」が用いられています。縄文土器の装飾性と、弥生土器のシンプルな造形を連続的に捉える作家の意図は、作品名に表れており、大きく反り返った口縁部と、渦巻き模様を各所に用い、内側まで丁寧に描かれた模様によって見るものの視線を器の内部へ誘います。
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