名称:企画展「美男におわす」埼玉県立近代美術館
会期:2021年9月23日(木・祝) ~ 11月3日(水・祝)
会期中、一部作品の展示替えがあります。
前期:10月10日(日)まで
後期:10月12日(火)から
休館日:月曜日
開館時間:10:00 ~ 17:30 (展示室への入場は17:00まで)
観覧料:一般1200円(960円)、大高生960円(770円)
※( ) 内は20名以上の団体料金。
※中学生以下、障害者手帳等をご提示の方 (付き添いの方1名を含む) は無料です。
※併せてMOMASコレクション (1階展示室) もご覧いただけます。
主催:埼玉県立近代美術館
協力:ヤマト運輸株式会社、JR東日本大宮支社、FM NACK 5
展示予定作品:約190点(前期・後期の合計点数)
住所:〒330-0061埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
TEL:048-824-0111
URL:埼玉県立近代美術館
かまくらや みほとけなれど 釈迦牟尼は 美男におわす 夏木立かな
― 与謝野晶子
「美男におわす」は、絵画をはじめとする日本の視覚文化に表された美少年、美青年のイメージを追い、人々が理想の男性像に何を求めてきたかを探る試みです。
日本美術史において「美人画」とよばれることの多い女性像は、江戸時代の浮世絵や近代絵画において隆盛をきわめ、現在も高い人気を誇っています。一方、男性像に目を向けると、その時々の社会情勢や流行、男性観などが反映された作品が数多く存在するものの、「美男画」といった呼称でひとくくりにされることはありませんでした。
与謝野晶子が鎌倉の大仏の姿に自分なりの「美男」を見いだしたように、人々は男性像に理想を投影し、心をときめかせてきました。あるときは聖なる存在として、またあるときは憧れのヒーローとして、あるいは性愛の対象として、さまざまな男性像が制作され、受容されてきたといえます。
しかしながら、美術史の分野において、男性を美しいものとして表現すること、見ること、そして語ることには、まだ十分な光が当たっているとはいえません。ライフスタイルや嗜好が多様化した現在、果たして「美男画」との出逢いはどのようなものになるでしょうか。
いざ、増殖する美男の園へ。美男をめぐる旅をはじめましょう。
展示構成
第一章 伝説の美少年
日本の視覚文化に登場する美男をめぐる旅は、伝説の美少年たちとともに幕を開きます。
少年が持つとみなされる生命力と無垢な精神は、神聖なるもののイメージや、伝説的なエピソードと結びつけられてきました。幼き日の聖徳太子、源平の貴公子たち、曾我兄弟に天草四郎など、類まれなる知性を備えていたり、ひときわ武勇に秀でていたり、誰にもまねできないような偉業を成し遂げていたり、運命に導かれるように悲劇的な最期を遂げていたり…。過去の憧れの人物は理想化して描かれ、時として、実際に容姿が優れていたという記録がなくとも、人々の思慕の念が連なるうちに「美男化」されることもありました。神秘性を秘めた稚児・童子像や、歴史的に美少年と謳われた人々の肖像などを紹介します。
出品作家(敬称略(以下同じ)):
今村紫紅、入江明日香、狩野惟信(養川院)、菊池契月、高畠華宵、谷文晁、豊原国周、蕗谷虹児、松岡映丘、松本楓湖、松元道夫、安田靫彦、山岸涼子 ※山岸涼子さんは前期のみの出品となります。また、図録への掲載はありません。
第二章 愛しい男
日本の文化史をたどると、公家や中世寺院の僧侶に仕えた稚児、武将たちに付き従った小姓など、成人男性の近くで身の回りの世話をする少年たちの存在がみられます。年長の男性が若年の男性(若衆)を愛でる衆道の文化は庶民の間にも浸透し、若衆の姿は近世の絵画でさかんに描かれています。
近代になり西洋流の写実的な表現を学んだ美術家たちは、青少年のみずみずしく健康的な肉体を表しました。一方で、大正デカダンスの世界では、陰のある退廃的な男性像が生まれています。第二次大戦後は、従来の美術とは異なったバックグラウンドを持つ表現が登場しました。幻想や異形の美、ナルシシズムを備え、時に残酷で官能的な青少年のイメージは、現代の耽美な世界観の男性像へとつながっています。
出品作家:
歌川国芳、懐月堂派、勝川春潮、金子國義、喜多川歌麿、鈴木春信、高畠華宵、菱川派、魔夜峰央、宮川一笑、宮川長春、三宅凰白、村山槐多、山本タカト、山本藤信、吉川観方、四谷シモン
第三章 魅せる男
若衆の舞踊図、役者絵など、その才能や心意気で「魅せる」、スター性を帯びた男性像を紹介します。
現代でも俳優やアイドルといった「推し」は心をときめかせてくれるものですが、江戸時代の人々を魅了したのは歌舞伎役者たちでした。17世紀後半には、男色の対象としての役者を単独で描いた、一種の「美人画」といえる作品が登場し、役者絵へと連なってゆきます。「弱きを助け強きをくじく」をモットーとする侠客たちも、庶民の味方として支持を集め、多彩な「美男」イメージの源泉となりました。
出品作家:
井上東籬、歌川国貞、歌川豊国(初代)、歌川豊国(二代)、歌川豊国(三代)、東洲斎写楽、鳥居清長、菱川師胤、山村耕花
第四章 戦う男
『戦う男』は、男性美のイメージに付随する「強さ」が、最も分かりやすく表現できるテーマといえます。超人的な活躍をする「戦う男」たちが総じて「美男」に描かれることは、江戸の昔から現代に到るまで変わらず共通しています。
江戸時代には、戦う英雄豪傑の活躍や、赤穂浪士の討ち入りなど実際に起きた事件が舞台上で演じられ、憧れや共感を呼びました。幕末には、歌川国芳や月岡芳年といった個性派の浮世絵師たちが登場し、大胆な発想と斬新な画風で理想のヒーロー像を打ち出します。明治時代には、戦いに従事する人々の心情や性格などに焦点をあてた歴史画が描かれました。続く大正時代には、少年を対象とした雑誌に高畠華宵や山口将吉郎、伊藤彦造らが耽美な武者像を描き、彼らの強い共感や憧れを喚起しました。
出品作家:
猪飼嘯谷、伊藤彦造、歌川国芳、川合玉堂、車田正美(原作)/森下孝三・菊池一仁(シリーズディレクター)、高畠華宵、月岡芳年、乃希、松岡映丘、安田靫彦、山口晃、山口将吉郎
第五章 わたしの「美男」、あなたの「美男」
最終章では、現代のアーティストが表現する多様な男性美を紹介します。
女性作家には長らく「美男」を描く機会を与えられてきませんでした。戦後になると少女漫画の世界から魅力的な男性像が登場し、1970年代には少年の心と身体をもって愛の物語を紡ぎだした漫画作品が誕生しました。漫画、アニメ、ゲームなどを文化的な土壌として育った作家たちは、90年代後半から「アート」の領域にサブカルチャーの要素を持ち込み、2000年代になると美少年、美青年のイメージを主題にした作品も登場します。その一方で、男性作家による、自らの内面や周囲の日常、あるいは男性の身体そのものを見つめた作品も生まれています。アーティストたちがそれぞれの男性像を通じて発するメッセージを受け止め、あなたにとっての「美男」についても考えていただければ幸いです。
出品作家:
ヨーガン・アクセルバル、市川真也、井原信次、海老原靖、金巻芳俊、川井徳寛、木村了子、竹宮惠子、唐仁原希、舟越桂、森栄喜、吉田芙希子、よしながふみ
※ 出品作家は五十音順に記載しています。
※ 会期中に展示替を行います。一部の作家は前期あるいは後期のみの出品となります。
※ 出品作品は変更になる可能性があります。
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