特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館

特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館

名称:特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館
会期:2021年9月23日(木・祝)〜2021年11月14日(日)
前期:9月23日~10月17日
後期:10月19日~11月14日
  ※一部の作品は会期中に展示替えあり
会場:奈良県立美術館
時間:9:00〜17:00 (最終入場時間 16:30)
休館日:月曜日
  ※ただし11月1日と11月8日は開館
観覧料:一般 800円
   大・高生 600円
   中・小生 400円
   ※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため団体料金の設定はありません
   ※次の方は会期中無料で観覧できます
   ①身体障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方と介助の方1人
   ②外国人観光客(長期滞在者・留学生を含む)と付添の観光ボランティアガイドの方
住所:〒630-8213奈良県奈良市登大路町10-6
TEL:0742-23-3968
URL:奈良県立美術館

特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館
特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館

幕末から明治へ―激動の奈良を生きた無二の異才、森川杜園。その妙技と芸術の全貌に迫る。
森川杜園(もりかわとえん 1820-1894)は、幕末から明治という時代の変革期に、奈良人形(一刀彫)の制作を軸に活躍した奈良の彫工です。古都・奈良の風雅な趣の伝統美を造形上の理想に掲げ、鋭い刀法と高度な彩色技術を用いてこれを制作しました。その卓越した技術と豊かな造形性は、単なる職工の域にとどまらない優れた芸術性を示すものとして、竹内久一や平櫛田中といった後世の彫刻家から高く評価されています。
森川杜園(幼名・友吉)は、文政3年(1820)現在の奈良県奈良市で生まれました。 13歳の頃から興福寺終南院の代官で四条派の画風で知られる内藤其淵に絵を学び、その画技を認められて当時の奈良奉行から扶疏(ともしげ)の名と杜園の号を与えられました。また、この頃より学んだ狂言では、大蔵(山田)八右衛門の名跡を継ぎ、大蔵流狂言師山田弥兵衛を襲名するほどの名手となりました。
一方同時期、漆芸家で画家の柴田是真のすすめにより奈良人形(一刀彫)の制作を開始します。奈良人形は、春日大社の摂社・春日若宮の祭礼で用いられる花笠や島台の装飾に淵源を持つと伝わる奈良の伝統工芸で、面と稜線を生かした簡素な形態の木彫りの人形です。杜園は、元禄期以来の伝統を継ぐ岡野松壽の作品に学びながらも、写生を踏まえた豊かな表現と極彩色を特徴とする華麗な作風で、これを芸術の域にまで高めました。
また、幕末には「春日若宮大宿所神前絵師」や「春日有職奈良人形師」と称して、独特の鹿彫や、能や狂言を題材とする奈良人形を制作する一方、維新後の神仏判然令に端を発した廃仏毀釈の混乱を経て、政府の古器旧物(文化財)保護活動や、奈良県の振興を目的とする奈良博覧会社の事業に携わり、正倉院宝物や県下の名宝の模写・模造の制作に取り組みました。杜園の妙技が発揮されたこれら後年の作品は、内国勧業博覧会(第1、2、3回展)やシカゴ万国博覧会で受賞を重ね、日本の彫刻史に確かな足跡を残すこととなりました。
このように杜園は、奈良人形(一刀彫)中興の祖として位置づけられると同時に、日本近代彫刻の先駆け的存在として近年見直されつつあります。杜園の生誕200周年を記念する本展は、杜園芸術の全貌を紹介しようとするもので、その意義と特質を改めて検証する機会とします。
なお本展では、「令和 3 年度国立博物館貸与促進事業」を活用し、国立博物館が所蔵する森川杜園の代表作などを借用し、公開します。

特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館
特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」奈良県立美術館

一言解説:これぞ 奈良人形(一刀彫)謡曲に登場する大盗賊「熊坂」(右)と小さくとも賢い「牛若丸」(左)を対比的に表現しています。華やかな彩色と量感豊かな造形表現が、杜園作品の魅力と特徴です。

能人形 牛若・熊坂(のうにんぎょう うしわか・くまさか)森川杜園 明治時代(19 世紀)東京国立博物館蔵
能人形 牛若・熊坂(のうにんぎょう うしわか・くまさか)森川杜園 明治時代(19 世紀)東京国立博物館蔵

展示構成
1.奈良人形(一刀彫)
…出世作となった「後高砂」をはじめとする奈良人形、センスと技が光る根付や香合などの細工物、春日信仰のもと独自の境地を拓いた鹿彫の 3 つのテーマで展示。単なる職工の域にとどまらない表現力豊かな杜園芸術の魅力を紹介します。
2.書画・関連資料
…四条派に学んだ杜園の絵画作品や、国学者たちとの交流を示す書跡類などの関連資料を展示。杜園の木彫制作を支えた絵師としての素養や、古都・奈良の伝統美を芸術上の理想に掲げる杜園の復古的・尚古的芸術観を育んだ歴史的・文化的背景を探ります。
3.模写・模造
…明治政府の文化財政策や奈良博覧会社の事業の一環として取り組んだ、正倉院宝物をはじめとする県下の名宝の模写・模造作品を中心に展示。杜園の卓越した彫技と高度な彩色技術が発揮されたもう一つの名宝を堪能します。
4.杜園とその周辺
…柴田是真や高村光雲、竹内久一、石川光明、平櫛田中、加納鉄哉など、杜園と交流のあった彫工たちの作品を展示。彫刻・工芸といった分類が未だ不分明にあった明治期の立体造形が持つ多様性を概観すると同時に、日本近代彫刻史における杜園の位置づけを再考します。

本展のみどころ 1.絵師・彫師・狂言師として、幕末から明治という激動の時代を生き抜いた、奈良の異才・森川杜園の足跡を、およそ 200 点の作品とともに振り返ります。
2.愛らしい鹿の群れに、軽妙洒脱な奈良人形、そして超絶技巧が冴えわたる名宝の模写・模造作品など、知られざる杜園の名品が一堂に会します。
3.簡素な造形に華やかな彩色を施した、素朴で風雅な大和の美・奈良人形(一刀彫)の魅力をご堪能いただきます。

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