特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

名称:特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
展示期間:2021年10月9日(土)~12月5日(日)
※会期中、一部作品の展示替を行います。
会場 京都国立博物館 平成知新館
交通 JR、近鉄、京阪電車、阪急電車、市バス 交通アクセス
休館日 月曜日
音声ガイド 未定
主催 京都国立博物館、畠山記念館、日本経済新聞社、NHK京都放送局、NHKエンタープライズ近畿
住所:〒605-0931京都府京都市東山区茶屋町527
TEL:075-541-1151
URL:京都国立博物館

 荏原製作所の創業者である畠山一清(はたけやまいっせい、号:即翁<そくおう>)が収集した美術品を収蔵する畠山記念館。本展は改築工事のため長期休館中の同館コレクションのなかから、茶道具を中心とする日本・中国・朝鮮の古美術の名品を紹介します。即翁が愛蔵した茶道具には「即翁與衆愛玩(そくおう よしゅうあいがん)」の蔵印が用いられており、その言葉は自らが蒐集品を独占するのではなく、多くの人と共に楽しみたいとの即翁の想いが込められています。即翁の美意識と彼の愛した古美術の世界を共有できるまたとない機会です。

格に入って格をでる。
一座建立への想い。

即翁が愛した茶道具の一つ、《伊賀花入 銘 からたち》は格式のあるものとして特に大事にされた。破格の造形ともいうべき姿ももちろんのことであるが、そのエピソードも格別であった。

もともと金沢の諸家に伝わってきた花入で、当地でも非常に著名なものであった。そのため、即翁の手元へと向かう際、名残を惜しんだ紋付袴もんつきはかまの数寄者たちに見送られたのである。それを電話で聞いた即翁は、同じく紋付袴の姿でその到着を出迎えたとされる。この花入の格を意識しての対応であり、即翁の道具に対しての想いが見て取れる逸話である。

さて、即翁が愛蔵した蒐集品には「即翁與衆愛玩」の愛蔵印がみられる。「與衆愛玩」とは、数寄者が蒐集品を独占するのではなく、多くの愛好家とともに楽しもうという意味を持つ。即翁はこの言葉を実践し、自身の蒐集品を公開し、まさに茶会に同席した者同士が心通い合す一座建立を体現できる施設として記念館を建設している。

畠山即翁の茶事とそのかたち
−翠庵披露と古稀自祝の茶事−

即翁は実業家としてのかたわら、大正時代末頃から晩年の約40年間にわたって茶の湯を楽しみ、実践していった。その傾倒ぶりは、自ら記した自会記(『来客日記』)と他会記(『茶会日記』)に記された500回あまりの茶会の記録からみてとれる。なかでも懐石へのこだわりは強く、献立から器選び、味付けに至るまで自身で目を通すという徹底ぶりであった。

なかでも昭和26年1月に開かれた高松宮宣仁たかまつのみやのぶひと親王から賜った庵号「翠庵すいあん」の披露と古稀自祝の茶事は、愛蔵の茶碗《赤楽茶碗 銘 雪峯》や墨蹟、中興名物の茶入など数々の名品を取り合わせた格調高いものであった。展示では、この会のほか東西の大茶会である光悦会や大師会での茶会の様子も紹介をする。

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

能楽
即翁の美意識を育てた生涯の友

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

道行けばそこかしこからうたいが聞こえ、「空から謡が降ってくる」とも語られた金沢。加賀かが 藩前田家の城下町として栄えたこの町に生まれ育った即翁は、生まれる前から、母のおなかの中で父の謡を聞いて育ったと述懐しています。宝生流の教授資格をもつほどの能好きであった父親の血を受け継ぎ、即翁もまた謡を習い、舞台に立ち、昭和三十年には 宝生ほうしょう流の免許を皆伝されるほど修練を重ねました。

即翁が蒐集した能面や能装束は、美術品であるとともに、自らが演能に着用し舞台を飾るものでもありました。前田家の伝来品を中核とすることからも、ふるさと金沢への愛慕がうかがえます。

茶の湯
数寄者即翁の茶の湯、名物道具との出会い

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

即翁は数寄者として茶の湯を実践し、名品茶道具の蒐集に熱意を傾けました。それは茶道具を中心として、1300件をこえる所蔵品として記念館に残されていることからもよくわかります。数多くの名品を有していましたが、その蒐集は個性的でありました。

将軍家や天下人と呼ばれる戦国武将たちが所持した井戸茶碗や唐物茶入、そして絵画や墨蹟ぼくせきなどだれもが認める名品を集めていますが、その一方で、即翁自身の審美眼に従い、《離洛帖りらくじょう》にみられる大胆な筆致の書や割高台茶碗や志野水指などといった破格ともいえる造形のものも好んでいます。また、故郷金沢や益田鈍翁ますだどんおう原三溪はらさんけいなどといった近代数寄者たちにゆかりのあるものも多くみられます。

琳派
光悦・宗達から其一まで、各時代の優品が揃う

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館

19世紀後半、ジャポニスムの興隆にともない海を渡った「琳派」は、特に1900年のパリ万博以降、西洋における評価を逆輸入しながら日本でもいっそうの注目を集めるようになり、ちょうどこの時期に原三溪は多くの琳派作品を蒐集しました。三溪没後、その一部は即翁の手に渡り、現在畠山記念館が所蔵する琳派作品群の一角をなしています。また三溪ばかりでなく、益田鈍翁や馬越恭平まごしきょうへいらも優れた琳派作品を所持していましたが、即翁の琳派作品蒐集には、こうした先達の数寄者に追随する意識もあったのかもしれません。

美への信念
畠山記念館の名品

特別展「畠山記念館の名品─能楽から茶の湯、そして琳派─」京都国立博物館
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