松下徹 「Brawnian Emotion」HARUKAITO by island

松下徹 「Brawnian Emotion」HARUKAITO by island

名称:松下徹 「Brawnian Emotion」HARUKAITO by island
会期:2022.01.08(土)~2022.02.13(日)
開廊時間 13:00〜19:00
入場料:無料
会場 HARUKAITO by island
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-12-9 BLOCK HOUSE 2F
URL:HARUKAITO by island

今回展示する作品は「ノイズと振動」を図形化するドローイングです。グリッドやドットを画面上に記し、それに沿って電流をコントロールし、電流の線と線を繋げていくことで地表図や音楽のスコアを描くイメージで制作を行いました。兼ねてより現象やシステムを扱った作品を発表していますが、今回は電気放電によるドローイング(リヒテンベルグ図形)を用いたシリーズの展開です。このリヒテンベルグ現象が生成する過程には強い電気抵抗が起こるため、制作中に実際にノイズの一種である雑熱音(ジジジ、、という音)が発生します。またフラクタル図形を成していることから神経系や植物、または河川図に相似する図形が生まれます。
ノイズを美的なものとして捉える歴史は1913年、未来派のアーティスト•ルイージ・ルッソラの「騒音の芸術」という宣言に由来します。その時代背景として20世紀初頭に、科学や工学など幅広い分野において「ノイズの発見」が大きな進化をもたらせていることが挙げられます。今回展示する電気放電のドローイングは、熱による分子の振動によって微粒子(この場合は電気)の揺らぎが生じる「ブラウン運動」の痕跡です。ブラウン運動とはアインシュタインが1905年に「揺動散逸定理」において解明した現象で、これにより分子や原子の存在が証明されました。またブラウン運動は1900年にフランス人のルイ・バシュリエによって株価の変動モデルの予測に応用され、現代の金融工学や理数ファイナンスの基礎を形成しました。このように現代の科学や工学、経済学まで広い分野で未だにブラウン運動が検証の基礎となり、近年身近なところでは感染症の空間飛散モデル、感染シュミレーションもその原理を応用してプログラミングされています。
このような科学の話を並べて展示について解説すると、作品が「純粋なブラウン運動の結果」として捉えられると思いますが、あくまで意図的にコントロールされた表現です。殷(いん)の時代に発展した甲骨占いは、亀の甲羅や牛の骨に熱した釘を差し込み、そこで生じた形を元に吉兆を占います。しかし発見された多くの骨からは事前に加工が施され、自然に意図的なひび割れが生じるように細工されていたと言います。作品においても同様で「絵画的に見えるように」現象をコントールし、「自然に見えるように」技術を開発しました。現象によって自然を模倣する、ノイズらしい音を選んでノイズミュージックを作る、そういう作為性(またはそのぎこちなさ)が重要と考えています。

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