特集「若き日の野長瀬晩花」和歌山県立近代美術館

野長瀬晩花《被布着たる少女》1911年 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵

名称:特集「若き日の野長瀬晩花」和歌山県立近代美術館
会期:2022年2月8日(火)〜4月17日(日)
開館時間:9:30〜17:00(最終入場は16:30まで)
料金:一般350(270)円、大学生240(180)円 ( )内は20名以上の団体料金
  *高校生以下、65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
  *2月26日、3月26日(毎月第4土曜日)は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
  *3月6日、4月3日(毎月第1日曜日)は全館無料
休館日;月曜日(ただし3月21日は祝日のため開館し、22日休館)
住所:〒640-8137 和歌山県和歌山市吹上1-4-14
TEL. 073-436-8690
URL:和歌山県立近代美術館

野長瀬晩花 ポートレート 1914年 25歳の晩花
野長瀬晩花 ポートレート 1914年 25歳の晩花

野長瀬晩花(1889〜1964)は、現在の和歌山県田辺市中辺路町に生まれ、1918(大正7)年、29歳のときに小野竹喬、土田麦僊、村上華岳、榊原紫峰と京都で美術団体の国画創作協会を創立したことで知られる日本画家です。
 晩花は14歳で和歌山を出て、大阪と京都で日本画を学びました。大阪で最初の師・中川蘆月に学んでいた頃の画稿類には、古画や絵手本の模写、草花・生き物・風景の写生など、のちの奔放な作風とは異なる堅実な学習ぶりがうかがえます。京都で2人目の師である谷口香嶠の画塾に所属した頃も、模写や写生等に取り組み、当時京都の主流であった円山・四条派の筆技をしっかり学び取っています。一方で、香嶠塾の頃のものと思われる写生帖には西洋人物の図なども散見され、徐々に西洋美術への傾倒も見せはじめます。
 1909(明治42)年には、開校まもない京都市立絵画専門学校(現在の京都市立芸術大学)に入学するも約2年で中退。その後、京都の新古美術品展覧会に出品した《被布着たる少女》によって、鮮烈なデビューを果たします。本作の実験的でモダンな表現は賛否を巻き起こし、当時、瀟洒な日本画が好まれた京都では理解されにくかったというエピソードも残っています。
 「ハイカラ」な晩花青年は、花街やカフェー、バーなどに繰り出し、遊蕩にふけりながら自由奔放な創作活動を展開しました。この時期に行われた移動式テントや、園芸店、遊興施設といった一風変わった場所での展示も、京都の人々には奇異に映ったことでしょう。大正初期頃には、習画期の筆遣いは影を潜め、ポスト印象派などの西洋美術に感化を受けながら、強い自意識の表れた作品を発表し、デモクラシーの空気の中で個性を開花させていきました。
 1917(大正6)年、晩花27歳の頃に雑誌へ投稿された「若きものは覚めよ」という文章では、若い画家たちに向けて「芸術家としてたつ若い男が先人の造つた道を手を懐にして黙つて歩いてゆくのは、あまりに卑怯だ狡猾だ盗棒だ」と呼びかけ、考えもなしに先達の真似をするのはいけないと訴えています。
 その翌年、彼は仲間とともに国画創作協会の創立に踏み切りました。先鋭的な晩花の存在は、国画創作協会創立会員の中でもひときわ異彩を放ち、ほかの会員たちが「優等生」とみなされたのに対して「放校処分でも受けそうな分子」と称されています。同会の解散にいたるまで、晩花は常に急先鋒として存在感を示し続けました。 当館では、紀州育ちの異色画家・晩花の顕彰に努め、近年では没後50年を記念して2014(平成26)年に特集展示を開催、2018(平成30)年には特別展「国画創作協会の全貌展」を開催し、昨年の特別展「和歌山の近現代美術の精華」でも、晩花の代表作を紹介しました。今回は画業の初期にスポットライトを当て、円山・四条派の写生を脱して、ポスト印象派等の影響下で先鋭化していく様子を紹介し、近年収蔵された新出作品も交えながら改めてその魅力に迫ります。

野長瀬晩花《都をどり》1917年頃 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《都をどり》1917年頃 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《三味線を弾く女》1917年頃 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《三味線を弾く女》1917年頃 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《舞妓図》1916年 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《舞妓図》1916年 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《被布着たる少女》1911年 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵
野長瀬晩花《被布着たる少女》1911年 顔料、絹 和歌山県立近代美術館蔵

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