アナ・ ウェイヤント 「Splinter」BLUM & POE

Anna Weyant, Lily, 2021 Oil on canvas 48 x 60 x 1 inches Photo: Genevieve Hanson

名称:アナ・ ウェイヤント 「Splinter」BLUM & POE
会期:2022.01.29(土)~2022.03.12(土)
  事前予約制
開館情報:12:00 〜 18:00
休館日:月曜,日曜,祝日休館
入場料:無料
会場:BLUM & POE
住所:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-14-34 原宿神宮の森 5F
TEL:03-3475-1631
URL:BLUM & POE 

Anna Weyant, Girl Crying at a Party, 2021 Oil on canvas 48 x 36 x 1 1/2 inches Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Girl Crying at a Party, 2021 Oil on canvas 48 x 36 x 1 1/2 inches Photo: Genevieve Hanson

ウェイヤントは、本展で紹介する作品群において、アメリカの女性向けケーブルチャンネル<ライフタイム>局の映画や90年代のセレブ文化といった視覚的な引用を用い、ポップカルチャーというテーマを掘り下げています。女性を侮蔑や性の対象として扱い、同時にステレオタイプに描いてきたテレビ向け映画に関心を持ったウェイヤントは、このジャンルのテレビ向け映画にありがちな誇張的にアメリカ郊外の闇を描くようなストーリーテリングを作品上で模倣しています。本展に登場する5点の紙作品及び4点の絵画作品中では、「キラキラしたパーティのひどいありさま」といったストーリーが語られています。そのダークでファンタジー的な世界観の中で、画中の主題を統制しながらも嘲笑うようにくるくると浮遊する金リボンや、可憐な花がしおれた姿が描かれている一方で、「Girl Crying at a Party」(2021年)はその光景を見渡すような視点をもって描かれています。
「Monster」(2021年)や「Drawing for Monster」(2021年)は、エミネムの2002年のヒット曲「Without Me」の「俺はモンスターを創った だって誰も望んでない マーシャルはもう見飽きた 皆が欲しいのはシェディ 俺は切り刻まれた肝臓みたいに意味がない」というリリックを引用元としてタイトルが付けられた作品です。そこでは、肉のような球根状の形態に見える複数の風船と光沢のある金リボン、それにぶら下がるソーセージの様子が捉えられています。作品に登場するぶら下がった肉のかたまりは、歌詞にある「切り刻まれた肝臓」の隠喩とも考えられるかもしれません。作品が、セルフポートレイト的に、あるいは散文的な描かれ方をしているならば、ぶら下がった肉とは、「モンスター」そのものであり、ウェイヤントの作品の表向きの顔であり内面の反映と考えられるかもしれません。それらの問いへの明確な答えはベールに包まれたまま、日本語でトゲを意味する「Splinter」と名付けられた展示で描写する奇妙なパーティの装飾は、その着想元である<ライフタイム>チャンネルのテレビ映画がまとう奇妙な暴力性が確かに想起されています。
作品中の花々は、だらりと垂れ、不完全な状態として、欠陥と共に美しさをもったオブジェクトとして存在しています。「Lily」(2021年)や「Drawing for Lily」(2021年)では、伝統的に純潔さや多産・繁栄のシンボルと考えられてきた白い百合の花が登場しますが、そこで描かれているのは去勢されたように雌しべが切り取られた様子や、今にも花弁が落ちそうな姿です。「Glory Days」(2021年)や「Drawing for Glory Days 」(2021年)では、花瓶に挿した4本のしおれた薔薇が描かれ、そのうちの1本には「Monster」にも登場する同一の金リボンがくくり付けられています。ウェイヤントは、金リボンというモチーフによって、作品中の架空の世界がはらむ矛盾や、超現実的な「郊外」とも呼べる場所の存在を暴きながら、各作品の主題を巧みに操っていきます。
さらに、アメリカ人モデルであるアンナ・ニコル・スミスの広く流通したイメージから着想を得た「Girl Crying at a Party」(2021年)は、<不気味さ>の追求というウェイヤント特有のアプローチをはっきりと示した作品です。涙を流す有名人、それも西洋における美の基準を明確に目指していたような女性についての比喩的なイメージの提示は、期待ゆえにのしかかってくる重荷や、現実と想定との乖離(もしくは、分裂)から生じた反動を暴き出す矛盾的な状況といった事柄についてのニュアンスを帯びています。ウェイヤントは全く予期しなかった現実という、かくも<不気味な>本質をもって、並列的な展示構成を通じて人々が持つ強迫観念を指摘し、掘り下げているのです。

Anna Weyant, Lily, 2021 Oil on canvas 48 x 60 x 1 inches Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Lily, 2021 Oil on canvas 48 x 60 x 1 inches Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Monster, 2021 Oil on canvas 60 x 48 x 1 inches Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Monster, 2021 Oil on canvas 60 x 48 x 1 inches Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Drawing for Sweet Painted Lady, 2021 Pencil and charcoal on paper 16 x 13 x 1 1/4 inches framed Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Drawing for Sweet Painted Lady, 2021 Pencil and charcoal on paper 16 x 13 x 1 1/4 inches framed Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Drawing for Monster, 2021 Pencil on paper 16 x 14 x 1 1/4 inches framed Photo: Genevieve Hanson
Anna Weyant, Drawing for Monster, 2021 Pencil on paper 16 x 14 x 1 1/4 inches framed Photo: Genevieve Hanson

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