名称:「それは、つまり物を以って詩をつくることである」駒込倉庫 Komagome SOKO
会期:2022.01.22(土)~2022.02.13(日)
土曜日・日曜日・祝日のみ開廊、開廊時間 12:00〜18:00
入場料:無料
会場:駒込倉庫 Komagome SOKO
住所:〒170-0003 東京都豊島区駒込2-14-2
URL:駒込倉庫 Komagome SOKO
アーティスト
エドワード・アーリントン、さわひらき、髙田安規子・政子、杉浦亜由子、曽我英子、大木美智子、中島裕子、西永和輝
「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」の代表作家として知られるエドワード・アーリントンは、日本とゆかりの深い作家です。1984年に国立近代美術館で開催された「メタファーとシンボル」展への参加や、フジテレビジョンギャラリーでの個展、また、ライフワークとして実践していた日本近代彫刻の研究*など、イギリスと日本を往来しながら、活動してきました。また、制作の傍ら、批評家としてもさまざまなテキストを書き残すとともに、長年、ロンドン大学スレード校でも教鞭をとりました。制作、執筆、教育を自らの活動の三本柱に据えていたアーリントンは、どの活動も広い意味において、彫刻と向きあう行為であると考えていました。本展では、近年日本で目にする機会が少なかったアーリントンの作品やテキストを、アーリントンが教えた日本人作家であるさわひらき、髙田安規子・政子、杉浦亜由子、曽我英子、大木美智子、中島裕子、西永和輝らの作品とともに紹介していきます。また、本展は、アーリントンと彼の教え子との初めての合同展になります。作品を一堂に会することで、形を変えながらも、時代や国を超えて継承されるものにも光を当てていきます。
アポロン神からプラスチックのパイナップルまでさまざまなモチーフを用い、独特の作風で数々の彫刻やドローイング作品を残したアーリントンは、記憶を主題に、オリジナルとは何かを問いつづけた作家です。オリジナルやそれを支えた神話が失われた今もなお、私たちの日常生活のなかに生き残りつづける古典的な形や、コピーとしてしか存在しない大量生産品にこそ、現代の真理があるのではないかと考えました。アーリントンは、これらのモチーフを変形・援用し、ユーモラスかつ独特の組みあわせで作品として蘇らせます。時間や場所、既成概念(共同幻想)を飛びこえ再構成されたこれらの作品は、私たちに新しい世界の見かたを提示します。
記憶、神話、再生といったテーマや、モノやフォルムへの人類学的アプローチは、アリトンの教え子の作品のなかにも見ることができます。たとえば、映像・立体・平面作品などで構成されたヴィデオ・インスタレーションを制作するさわひらきは、自身の心象風景や記憶をたよりに、実態のない、しかし確実に存在する感覚領域を表現します。おなじように、名前のない感覚や実態のない祈りなどに着目する杉浦亜由子は、人々の意識にしみついた触覚やかたちを見る者に模索させる彫刻を手がけます。一方、髙田安規子・政子は、トランプや切手など身近なものに手を加えることでスケールを転換し、私たちが拠りどころとする価値や基準を揺るがし、世界の見かたを変えようとします。中島裕子も、身近な既製品やファウンド・オブジェを用いた立体作品を制作しますが、ものを本来の機能やコンテクストから切りはなすことで新しい言語を構築し、言葉だけでは捉えきれない人間の内的世界の表現をこころみます。曽我英子は、アイヌ文化を学ぶ活動をとおして、資本主義、植民地主義や国家主義が生みだしてきた現代の価値観を見なおします。アイヌ着物「チカルカルペ」や鮭靴 「チェプケリ」づくりを習い、自身でそれを再生することで得た知識や、出会う人びととの記憶をたどりながら、日常の些細なプロセスやはかない感覚的な側面が、集団性や文化発展といった大きな現象につながる様子を観察しながら制作します。西永和輝は、「装飾芸術」への新しいアプローチを提案します。地球上もっとも普遍的に行われてきた造形活動ともいえる「装飾芸術」。それは一方で、発達すればするほど機能性や生産性を損ない、不合理化していくという性質も持ちあわせます。こうした相反するあり方に注目し「装飾は植物や癌細胞のように人の都合を顧みず成長する」というアイデアを提示します。最後に、イギリス在住の大木美智子は、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)運動やコロナ以降、これまで以上に社会のあらゆる局面でポリティカル・コレクトネスが叫ばれる現在、コンテンポラリーアートとは、芸術を鑑賞するとは、美的経験とはいかなることかをめぐり考察します。
- 1988年に開催された「エドワード・アーリントン」展
** 武蔵野美術大学とヘンリー・ムーア・インスティテュートとの国際共同研究
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