名称:石﨑朝子 + 小林このみ 「ヤシの木のムーブ」Room_412
会期:2022年4月5日(火)~4月17日(日)
開館時間:11:00~20:00 ※最終日のみ18:00まで
※会期中無休
住所:〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町15-8 高木ビル412号室
TEL:050-5319-8428
URL:Room_412
本展は、美術作家の石﨑朝子・小林このみによる2人展です。
小林は、物語に満たないような小さな話から、想像をかきたてるように作品を制作するアーティストです。小林は2021年メトロ銀座ギャラリーで開催された「移動する視点、通路の彫刻」展において《なんとか健二ギター教室》というインスタレーション作品を発表しました。この作品は彼女が犬の散歩中に見つけた「ギター教室」という立派な青い看板を掲げながらも一度もギターの音を聞いたことがない妙な建物から着想を得ているといいます。
「移動する視点、通路の彫刻」展の推薦者であるAzby Brown氏は小林の作品についてこのように言及しています。「小林さんは創作過程において、彼女のいくつかの閃めきを起点として、それと共に進み、発展し、大胆にも、始まりとは全く異なる結末を迎えるということが頻繁に起こります。彼女の作品は、楽しく予測できないものなのです。」
このように小林の作品は、たまたま見つけた看板など、何でもないような出来事を色彩豊かなドローイングや、モルタル、FRPなど多様な素材組み合わせることで、話を大胆に飛躍させながらもどこか納得できてしまうような不思議な存在感があり、そこには(例えば過去作《犬に服を着せたような話》《象の履く靴》のように)彼女の独特な言葉えらびが起因しているように思われます。
石﨑は、風景を見たときに感じた妙なリアリティを表現することから出発して、彫刻・映像・パフォーマンスを用いて制作活動を行っています。「ストリートのリアリティ」という言葉を用いて都市空間のフィールドワークを通して風景の中に見い出す様々な断片を作品に変換している石﨑は、例えば都市空間の余白を埋めるかのように書かれたグラフィティーや、ビルのガラス面が複雑に反射し合うことで風景が幾重にも重なる様子から着想を得ており、あらゆる角度で変化する「面」の構造を取り入れた作品やレイヤー的に成り立つ作品に展開しています。
2人に共通するのは、平らな表面によって形作られた造形物を取り入れていることをはじめ、持ち運びできる、あるいは自らの移動に基づいた形態・表現の形式を選択している点です。
本展「ヤシの木のムーブ」は企画に先立って、展示会場の土地でもある渋谷の街を共同でリサーチし、路上の出来事を拾い上げて記録し、旅行記のような作品集「スクランブルゲイズ」を制作しています。“ばらばらの眼差し”という意味での「スクランブルゲイズ」は石﨑による造語ですが、お互いの街を見る視点の違いや、作品化における互いの変換の違いをページをめくるようにして比較することで、着眼点の違いや、表現の軸になるものを確認しあい、2人展のイメージを共有していきました。
2人による街歩きにおいて、小林は飼い犬のしっぽがヤシの木に似ていることが最近の関心であると語り、「○○にみえる」というような見立てを探すのに対して、石﨑は環境のノイズ的なエレメントや急勾配の坂や、入り込めるかかギリギリの隙間など身体と共に街に着目します。道中の両者の眼差しはごちゃ混ぜであり、まさにスクランブルな経験です。
本展は、風景の中にヤシの木的な見立てを探す小林と、スケートボーダーが路上でトリックをする場を見つけ出すように、身体感覚を伴うスポットを見つけ出す石﨑の2人による、バラバラなアクションをしかけながらも、どこか混じりあうような2人のムーブを展開します。どうぞご期待ください。
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