アニッシュ・カプーア 「Selected works 2015-2022」スカイ ピラミデ

Anish Kapoor《Eclipse》 2018, Stainless steel and Lacquer, Each: 121×121×15cm

名称:アニッシュ・カプーア 「Selected works 2015-2022」スカイ ピラミデ
会期:2022年5月7日(土)~2022年7月9日(土)
開館時間:12:00 〜 18:00
休館日:月曜、火曜、水曜、日曜、祝日
入場料:無料
会場:スカイ ピラミデ
住所:〒106-0032 東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル 3F
TEL:03-3821-1144
URL:スカイ ピラミデ

Anish Kapoor《Eclipse》 2018, Stainless steel and Lacquer, Each: 121×121×15cm
Anish Kapoor《Eclipse》 2018, Stainless steel and Lacquer, Each: 121×121×15cm

インド、ムンバイ生まれの現代美術作家、アニッシュ・カプーア(1954年~)は、人間の知覚および空間に直接的に働きかけ、既成概念を覆す数多くの作品を発表してきました。現在はロンドンを拠点とし、2012年のロンドンオリンピックでは記念モニュメントを設計、また2015年にはヴェルサイユ宮殿で個展を開催するなど、世界各国で活動を展開し、常に国際的な注目を集めています。カプーアはかねてより“Void(虚空)”の概念を、色、光、知覚、空間といった諸要素との造形的実践において探求し続けてきました。2016年には、99.965%の光を吸収する「地上で最も黒い黒」Vantablack(ベンタブラック)の芸術的用途における権利を買い取り、作品にさらなる強度をもたらす姿勢を明らかにしました。現在イタリア、ベニスでは、アカデミア美術館およびパラッツォ・マンフリンの二会場で、英国人アーティストとしては初となるカプーアの大規模回顧展が開会し、作家のキャリアを総括する重要な作品群とともに、同素材を使用した新プロジェクトが初公開されています。本展は、ベニスで開催中の展覧会とあわせて、作家の新作を含む構成を展示し、カプーア作品の魅力とその芸術的実践の成果を改めて見通すものです。
鮮やかなブルーが印象的な円形の彫刻が入口で鑑賞者を迎え入れます。底に向かって浅く窪んだカーブを描く、この丸いステンレス製のオブジェは、カプーア独特の作品形式のひとつです。二つの特殊な造形が、向かい合わせになって飾られています。鏡面に映る自分の姿が反転したり、予想もつかない風景が映り込んだりする、カプーア作品の驚きに満ちた鑑賞体験に違わず、この銀色の構造体もまた、見る者をその独特の世界観へと惹きこむ特殊な磁力を帯びています。妊婦のお腹のように膨らんで見える造形は、《Untitled》と名付けられています。本作が醸し出すユーモラスな雰囲気は、得体の知れないものが闇の中から生まれ出る、どこか不穏な連想とも混じり合い、多層的な解釈を生み出しています。
別室は、カプーアがかねてより言及する“Void”空間の構成を示唆する展示室となっています。
天井のコーナーが黒く沈み込んで見えます。あるいは浮かんでいるのでしょうか。黒い穴が空いているようにも、あるいは闇が無限に滲出し続けているようにも見える本作は、空間自体に介入し、“Void”をもたらす彫刻作品です。作家は、物質と非物質、存在と非存在、空っぽなのに満ちているという、矛盾した概念の三次元空間における両立を追求し、またそれを実現してきました。初期の頃より一貫している作家の「非物質的な物質」への関心は、1990年のベニス・ビエンナーレで発表され、翌年ターナー賞を受賞した“Void”彫刻において、既にひとつの到達点を示していたともいえるでしょう。カプーアの本概念への取り組みは、空間へのより直接的な展開を伴って、今日新たな地平を我々に指し示しているようです。
展示室の壁面の境目には、向かい合わせとなる形で、さらに二つの作品が設置されています。《Eclipse》と題されたディプティックは、二つの円が反射しながら重なるさまが、天体の蝕を文字通り彷彿とさせるようです。一方、金色に輝く縦長のオブジェは、その表面に風景を映し込み、空間にさらなる抽象性を付与しています。
作家のあくなき追求は、素材の開発と応用を経て、誰も辿り着いたことのない次元へと加速し続けているようです。色、光、知覚、空間といった要素を探求し続けるアニッシュ・カプーアの現在地を見渡し、近年の成果を周知する展覧会となります。世界的に活躍を続ける作家の思考およびその実践の集大成をご高覧ください。

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