「韓国画と東洋画と」FINCH ARTS

イ・フィウク 『鏡-image』72.7 x 60.6cm リネンに油絵具 2021

名称:「韓国画と東洋画と」FINCH ARTS
会期:2022年6月3日(金)~2022年6月28日(火)
開館時間:13:00 〜 19:00
休館日:月曜、火曜、水曜、木曜
入場料:無料
会場:FINCH ARTS
住所:〒606-8412 京都府京都市左京区浄土寺馬場町1-3
TEL:(0)80 1351 9467
URL:FINCH ARTS 

イ・フィウク 『鏡-image』72.7 x 60.6cm リネンに油絵具 2021
イ・フィウク 『鏡-image』72.7 x 60.6cm リネンに油絵具 2021

この度FINCH ARTSでは紺野優希キュレーション「韓国画と東洋画と」を開催いたします。
韓国の現代東洋画を論じるには、それが二重三重にも捩れている点を捉える必要がある。一つ目は、ファインアートと民俗画。二つ目は過去と現在、そして三つ目は日本と韓国である。書画の切り離しのように、美術という言葉が用いられはじめ、実用性と鑑賞対象に価値の基準が振り分けられた。これらは時代を経ながら、さらに絡み合ってくる。西洋から抽象表現主義などの最新の動向が輸入されたことで、東洋画(日本画/韓国画)は美術史上でアップデートを求められてきた。また一方で、国粋主義や革新を志向する上で、それらは政治的な介入を受けたり、道具として活用された。
西洋対東洋の構図で考えるよりも遥かに、日本と韓国は密接に関わってきた。一つ目と二つ目は、韓国という場において日本の領土的/政治的介入によってはじまった。20世紀を迎えて間も無く日本(大日本帝国)の植民地となった朝鮮半島では、公募展の審査基準、留学先の日本における美術の動向など、アーティストの活動に影響を及ぼしていた。そして日本の終戦(敗戦)、韓国からすれば「解放」を迎えた以降も、三つの捩れは解消されることなく、続いている。「解放」後、絵画における「日本」らしい表現(郷土色や倭色)の清算、先進性への高まりによって掲げられた抽象表現=東洋の精神、墨の黒さではなく色彩感としての民族性の探求、ソウル・オリンピックという舞台を前にして掲げられた「現代性」、そしてグローバル化の最中のアプロプリエーション。激動の近代期から今日にかけてまで、三つの捩れは「韓国画」とも「東洋画」ともジャンル分けすることが難しい韓国画/東洋画の現状を表しているだろう。
本展には8名のアーティストが参加する。8名は、近年韓国内で精力的に活動している「画家」である。東洋画/韓国画を専攻した者もいれば、西洋画を専攻した者もいる。壯紙に描かれた作品もあれば、アクリルで描かれた作品もある。ここで「画家」たちは、過去これまで「東洋画」や「韓国画」というカテゴリーに負わされていた使命から解放されている。だからと言って、「西洋の韓国的解釈」や「過去の現代化」という見た目ばかりの追従(=アプロプリエーション)とも距離をとっている。出展作の中には、一見すると、モダニズム絵画にも見えたり、単なる引用や借用に見えるものもある。しかし、これまで東洋や国家主義、さらには東西の融合=現代性などのアイデンティティを背負わされた歴史を踏まえると、出展作は東洋画/韓国画を規定する枠を越えようとしていると言えないか。それだけでなく、その枠を再検討する試みとして、評価できないだろうか。
企画展のタイトル『韓国画と東洋画と』の後に続く単語は、「西洋美術」かもしれない。もしくは、「抽象」や「具象」、「起源」や「特異性/オリジナリティ」かもしれない。または、支配していた「日本」や先進国入りを目指した「大韓民国」かもしれない。韓国画と東洋画を同一視するのではなく、広い視座から考えられるように、もう一つの軸を掲げること。そうすることで、韓国画と東洋画を分かつ起点は勿論のこと、日本や西洋、国家と個人(アーティスト)との歴史的・社会的・政治的関わり方の中で、見えてくるものがあるだろう。最終的には、単なる「融合」や「ミックス」に落ち着くことなく、定義して/されてきた「韓国画/東洋画」と(いう枠組み)の別れを告げることにも繋がるだろう。
アーティスト
クォン・ヘソン、キム・ヘスク、ヤン・ユヨン、イ・イェジン、イ・ウンジ、イ・フィウク、チェ・カヨン、チェ・スリョン

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