「ラファエル・ローゼンダール|Screen Time」Takuro Someya Contemporary Art

Rafaël Rozendaal, Abstract Browsing 22 03 01 (LA Times), 2022, 292 x 144 cm

名称:「ラファエル・ローゼンダール|Screen Time」Takuro Someya Contemporary Art
会期:2022年11月26日〜2022年12月24日
開館時間:火〜土/11:00~18:00
   金/11:00~20:00
休館日:日曜・月曜・祝日
会場:Takuro Someya Contemporary Art
入場料:無料
住所:〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 3F & 5F
TEL : 03-6712-9887
URL:Takuro Someya Contemporary Art

Takuro Someya Contemporary Artは11月26日(土)より、ラファエル・ローゼンダールの個展「Screen Time」を開催いたします。
本展「Screen Time」は、ジャガード織りのタペストリー作品「Abstract Browsing」とレンチキュラー作品「Into Time」の2つのシリーズにより構成されています。これらのシリーズがメインとなってTSCAで発表されるのは、それぞれ「Somewhere」(2016)、「Convenient」(2017)以来となります。
本展のタイトルが示唆するように、この2つのシリーズはいずれも、時間のさまざまな在り方の本質を探るものです。
ローゼンダールはインタビューやSNSなどで、現代のひとびとが見つめる風景が、実際の「窓」よりもスクリーン上の「ウィンドウ」に移っていることをたびたび指摘してきました。人間と「風景」の歴史を振り返ると、実際の窓の外の風景を眺めていた時代から、家族でテレビを囲んで移り変わっていく映像を眺めた時代を経て、現代では個人のデバイスのスクリーンを通してそれぞれが好きな時に好きなコンテンツを見て、スクリーンの中を過ごす時代に入っていると言えます。このような視覚文化に基づいた時代区分に名前をつけるとすれば、現代はいわば「Screen Time」に属していると言えるでしょう。そして本展のタイトルとして、「Screen Time」は視覚文化の発展をめぐる長大な時間を想起させます。
ローゼンダールは、この視覚文化の時代区分の連続性のなかで「現代」が投げかける問いに向き合おうとしているアーティスト等の中で先導的な存在として作品を作り続けてきました。タペストリー作品「Abstract Browsing」は、ウェブページの画面構成を抽象化した絵画作品で、2014年にローゼンダールが開発したプログラム作品『abstract browsing .net』で生成されたイメージをジャガード織りにして出力しています。本作を生成するプログラム作品は、ウェブページ上にある情報(PCのブラウザ上の画像、配置、テキスト)をすべて明るい色の幾何学的な配置に反転するGoogle Chromeのプラグインとして無料で公開されています。彼は、私たちにもよく知られた数多くのサービスのサイト上で、このプログラムを走らせサンプルイメージを日々記録しており、その数は1000を超えているそうです。その中から絵として違和感を覚えるものをあえて選び、織物をメディウムとして出力しペインティングとします。その織り機がコンピュータの原型であり、織物が「デジタル画像」でありながら物質を伴い、かつ機械的に生成されるマテリアルであるという点は、デジタル画像と伝統的な技法をつなげることによって、「デジタル」が実は有している長い歴史を示します。ここに、ローゼンダールのメディウムの選択のユニークさが象徴されています。
本展で発表する「Abstract Browsing」の新作は、作品の横幅が固定され、縦長のフォーマットになっています。長いものでは3メートルに近い作品もあります。その誇張された縦方向は、スマートフォンでウェブサイトをスクロールするときの縦長の形式を思い起こさせます。このように、本作は、ウェブブラウザの垂直性と、ジャガード織りが縦方向に一列ずつ伸びる同様の構造を持つメディウムであることを強調しています。しかしながら、近年、ウェブブラウザは、スクリーンショットでページ全体をキャプチャーして保存できるようにもなりました。そのページ内をスクロールして閲覧する時と異なり、読み物や情報としてではなく「イメージ」として扱うときには、ごく短い「時間」で、それを採取し、一望することができるのです。これは、織り機がタペストリーを作るときの、ゆったりと流れる時間とは対照的な時間の感覚です。このように、「Abstract Browsing」の新作には、スクリーンとしてのタペストリーを生成する時間、そして私たちの日常を構成する多くのスクリーンの中に存在する様々な時間のテクスチャーが織り込まれています。
レンチキュラー作品「into time」は、絵画でありながら一瞬ではそのイメージのすべてを把握できないという点に従来型の絵画との違いがあります。このシリーズのうち一部の作品はローゼンダールのウェブ作品『intotime.us』、『intotime.com』、『intotime.org』上で、生成することができる幾何学的なパターンや色彩のグラデーションをもとにしています。
レンチキュラー・ペインティングは絵画のなかに時間を内包しているために、鑑賞する私たちに対して「動き」を要求し、その「動き」を鑑賞者が実践することによって、全体的な把握が可能になるイメージと言えます。他方で、レンチキュラーの仕組みはディスプレイに近く、RGBモニターやプロジェクターに近い表面構造を持つ素材です。モニターやプロジェクターが、実際の「風景」の代替となるような移り変わるイメージを「映す」メディウムになっているのに相対して、レンチキュラーはその「移り変わるイメージ」をメディウムの構造として「備えている」のです。また、本作は「風景」と同様に、見る人の立つ位置によって無限の結果をもたらします。本展で公開する新作は、ローゼンダールの色彩感覚とその組み合わせの進化を反映しています。
ローゼンダールが選択するジャガード・タペストリーやレンチキュラー・プリントは、どちらも長い歴史を持つものです。このメディウムの使用は、彼がイメージを生成するために使用するデジタルデバイスやテクノロジーとは一見接点を持たないように見えるこれらの要素を、視覚文化の連続性に沿ったものとして捉えることを可能にします。そのことも含めて、本展覧会、そしてローゼンダールの制作活動全体は、常に、多様な「時間」のあり方を示唆してくれていると考えられます。本展で発表する新作の拡大されたスケールは、パンデミックやNFTの台頭によってもたらされた多くの変化に続く新たなモーメントへと私たちを引き込み、実物の作品の前に立ち、時間の流れを感じるという鑑賞体験を改めて享受するものとも言えるでしょう。

Rafaël Rozendaal, Abstract Browsing 22 03 01 (LA Times), 2022, 292 x 144 cm
Rafaël Rozendaal, Abstract Browsing 22 03 01 (LA Times), 2022, 292 x 144 cm

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