大久保紗也「Box of moonlight」WAITINGROOM

大久保紗也「Box of moonlight」WAITINGROOM

名称:大久保紗也「Box of moonlight」WAITINGROOM
会期:2022年11月16日〜2022年12月25日
会場:WAITINGROOM(東京)
入場料:無料
開館時間:水~土 12:00~19:00 / 日 12:00~17:00
休館日:月・火・祝日
住所:〒112-0005 東京都文京区水道2-14-2 1F
TEL:03-6304-1877
URL:WAITINGROOM

WAITINGROOM(東京)では、2022年11月26日(土)から12月25日(日)まで、大久保紗也の、当ギャラリーでは2年ぶり3回目となる個展『Box of moonlight』を開催いたします。大久保は、輪郭線として表現される記号的なイメージと、物質感を伴う抽象的な像のうねりという、二つの分離した要素を共存させた絵画作品を主に制作しています。本展では、大久保が初めて取り組んだ立体作品の新シリーズを初公開いたします。石塑粘土で細部まで具象的に造形された人型のオブジェの上に、磨りガラスのように曇ったアクリルボックスを被せ、大久保の絵画作品に特徴的な、輪郭線の揺らぎやモチーフの混ざり、それらの視認の曖昧さといった要素を、新たな素材を用いて表現した新シリーズとなります。加えて、これまで大久保が支持体として用いてきた波形のトタン板が、さらに屋根状に折れた素材を支持体とする、より立体感を増した新作の絵画作品も発表いたします。
様々なレイヤーが分離しながら混ざりあいながら存在する人間の「どうしようもなさ」
様々なポーズをとる人間の姿や人体のパーツを表すドローイングの線、その間に見える色や抽象的な模様、トタン板の立体感やその間に挟まった油絵具のかたまりなど、大久保紗也の作品は、いくつもの要素が重なり合いながら厚みをもって存在しています。それらは、鑑賞する側が注目したい場所により、時に混ざり合い、時に別々に見えてきます。
本展で発表される新作の制作にあたり、大久保は二つの物語からモチーフをとっています。リヒャルト・デーメルの『浄められた夜』では、月光の下で林を歩く男に、女が行きずりの男との子供を身ごもっていることを告白しますが、男は女を赦します。この詩を書いた時、デーメルは妻子がありながら妊婦の女性と不倫関係にあったため、月光の下で救済を求めたのは他ならぬデーメル自身であるとも言えます。同時期に書かれた尾崎紅葉の『金色夜叉』でも、月夜に女が男に赦しを請うシーンがありますが、男はこれを拒絶し、女は自らの行いを後悔し続けます。この物語の翻案であるバーサ・M・クレー(シャーロット・メアリー・ブレイム)の小説『Weaker than a Woman(女より弱きもの)』ではヒロインは堂々とした女性として描かれており、『金色夜叉』の女性は「明治の夫人の権化」であることがわかります。
「『真実』や『正確さ』とは常に受け取った個々の中で変容していくものです」と大久保が言うように、人間の姿を表す輪郭線は手癖や思い込みの上で引かれており、それらを崩すような抽象的な要素は、個々にも、同時にも捉えることが可能です。立体と平面、具象と抽象の間を行き来しながら、それらが混ざり合って一つの作品の中に凝固して存在する。齟齬や間違いを引き起こす人間の「どうしようもなさ」と向き合いながら、立体作品という新たな表現に挑んだ大久保の新作群に、ぜひご期待ください。

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