大山エンリコイサム「Alpen Flora」日本橋三越本店

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #548, 2023 Acrylic on found image 18.6 x 12.6 cm Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio

名称:大山エンリコイサム「Alpen Flora」日本橋三越本店
会期:2023年8月23日(水) ~ 2023年9月4日(月)
会場:本館6階 コンテンポラリーギャラリー 最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #567, 2023
Acrylic on found image

18.6 x 12.6 cm

Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #567, 2023 Acrylic on found image 18.6 x 12.6 cm Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio

日本の国境が長く安定してきたのは、世界史的には稀なことである。
例えばヨーロッパ大陸では、歴史を通して国のボーダーがときに微かに、ときに激しく揺らいできた。
近代国家、都市国家、帝国、王国、共和国など、国の概念はさまざまだが、境界線による大地の分割が基本となる。
それらは人工的な境界線にすぎず、より大きな領土を欲する権力によって、または独立を求める被支配民族によって、たえず引き直される。
そうして無数に引き直された線の記憶が集積し、揺らぎをともなう国や共同体のまだらなアイデンティティが形成されてきた。
しかしその根底には、引き直しえない線が存在する。自然の境界線である。
海、陸、山、谷といった自然の物理的ボーダーは、国や共同体が生じるための最初のまとまりを提供してきた。
島国日本の国境が安定しているのは、自然と人工のボーダーが比較的一致するためである。
しかしそれらは通常、揺らでいることが多い。ヨーロッパでそれを象徴するモティーフのひとつが、アルプス山脈である。
大陸を南北に分割するこの造山帯は、オーストリア、スロヴェニア、イタリア、ドイツ、リヒテンシュタイン、スイス、フランス、モナコ公国の8国家の領土を横断している。
西ヨーロッパの最高峰、モンブランを擁するこの山脈はまた、雄大な広さだけでなく、特筆すべき高さも誇っている。
イタリアとフランスの国境に位置し、その帰属がしばしば議論されるように、モンブランはそれ自体が領土の横断を体現する。
そうした両義性が水平の越境なら、アルプス山脈には垂直の越境もある。その一例が高山植物である。
それ以上の高度では厳しい自然環境のために森林が形成されない限界のラインを森林限界と呼ぶが、高山植物はそれを超えたエリアに生息し、一般の草花とは異なる独自の生態系を構築している。
本展では、高山植物であるAlpen Flora(アルプスの草花)の多様なフォルムに、私の代表的なモティーフである「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」を呼応させた新作30点を中心に展示する。
QTSもまた、領域の横断から生じる形体の変化を特徴とし、極大にも極小にもなるスケールフリーの表現である。
本展では、マクロとミクロの往還、越境性、固有の圏域の生成という点でQTSとアルプスの山々や草花が共振しつつ、同時に、都市と自然、抽象と具象、無機物と有機物、色彩の有無といった両者のするどくも心地よい対比が、その共振のうちに映し出されている。

Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #551, 2023

Acrylic on found image 

18.6 x 12.6 cm

Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #551, 2023 Acrylic on found image 18.6 x 12.6 cm Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #548, 2023

Acrylic on found image

18.6 x 12.6 cm

Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio
Enrico Isamu Oyama, FFIGURATI #548, 2023 Acrylic on found image 18.6 x 12.6 cm Artwork ©︎Enrico Isamu Oyama Studio

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