佐藤秀親 「而」MARGIN

佐藤秀親 「而」MARGIN

名称:佐藤秀親 「而」MARGIN
会期:2024年1月27日(土)〜2024年2月24日(土)
会場:MARGIN
開館時間:12:00 〜 19:00
休館日:日曜日、月曜日、祝日
入場料:無料
住所:〒103-0003 東京都中央区日本橋横山町4-10
TEL:070-4000-8007
URL:MARGIN

この度、MARGINでは佐藤秀親(1988年-)の個展「而」を開催いたします。本スペースにおける初の個展となる本展では、新作を含む11点の油彩ペインティング、数々のドローイングを発表いたします。
佐藤秀親は1988年東京生まれ。2018年より独学で絵画を始め、2020年からは瀬戸内海の離島に移住し、集中的に制作を続けています。絵画制作以前から現在にいたるまで、音楽の制作を並行して続けており、音楽から受けるインスピレーションは彼の絵画に深く影響しています。
佐藤の描く抽象画は、限定された色彩と独特な造形を特徴とします。生み出される造形は、日頃から続けているドローイングに由来します。瞬間的な腕の動きの痕跡を集積したドローイングは、着想と忘却の狭間に漂うイメージを瞬時に写しとるための訓練の要素があります。
支持体に向かって手探りで筆を動かし、絶えず拭き消しと描き直しを繰り返しながら、線と面のマッスを起点に造形を生んでいきます。キャンバスに表れた時点では偶発性を帯びた無意識の産物であっても、そこから生まれたフォルムを丹念に造形していく過程は、極めて意識的な作業と言えます。そのアプローチは、イメージ全体を厳格なコントロールにおき、画面のコンポジションを追求した中期のウィリアム・デ・クーニングを思わせます。
ゲームエフェクトのような動的なイメージ、音楽的な階調構造がもたらすカタルシス、脳裏によぎった記憶の断片。有形・無形を問わず、フラットなインスピレーションを支持体と対話させ、有象無象の中から限られた面積で図と地を奪い合い、結果的にできた造形とそこから漏れ出た淡いは、佐藤の非直線的な思考活動の痕跡でもあり、鑑賞者に想像の余白を残します。
本展で展示する作品は、2022年の半ばから2024年の初めに描かれた油彩です。本展における新旧の作品の配置は、佐藤の制作の直線的な進歩を示すと言うよりは、彼が油画と向き合う中で少しずつ獲得された造形言語がその場その場に合わせて、話し方を変えていることを知る一つの手掛かりでしかないのかもしれません。それでも、複数の作品がキャンバスを超えて呼応しあっていることは確かです。
時折、美術史の文脈に接近しながらも、一つの枠組みに囚われることのない独自の軽やかさは、ある種情報を遮断した環境で制作に取り組む真摯な姿勢を裏付けています。これまで研鑽してきた絵画制作の一つの区切りとして、ぜひこの機会に佐藤秀親の展覧会をご高覧ください。

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