「敷居を踏む Step on the Threshold」東京藝術大学大学美術館

「敷居を踏む Step on the Threshold」は、訪れる人を屋内と屋外、アートと自然、そして日常生活と美術制度のあいだの空間へと招く展覧会です。本展では、私たちが当たり前に受容している境界線の〈敷居/閾(しきい)〉に存在するアートのあり方を探ります。 さまざまな媒体で活動する5人の現代アーティストの作品を紹介すると共に、会期を通したワークショップやパフォーマンス、ウォーキングツアーによって、展示空間としてのギャラリーの内・外を解きほぐすことを目的としています。 日本において現代アートは、しばしば「敷居が高い」と形容されます。また、日本家屋に一般的に見られる敷居は、建具のためのレールであると同時に、空間と空間を区切る〈敷居/閾(しきい)〉でもあります。敷居を踏まないという風習は、そこに在っても関わりを避けるものとしての閾を浮かび上がらせます。こうした意味で〈敷居/閾(しきい)〉は、変容の過程における座りの悪い「中間の形態」としても理解されます。しかし、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンが指摘したように、それは新たな現実が息づく「敷居の魔力」にもなり得るのではないでしょうか。 風の音や、無数にある石、私たちが日々出会う身近な物語は、どこからアートと銘打たれ、識別されるのでしょうか?日常の体験は、私たちのアートの受容をどのように彩り、ギャラリーの中での出会いは、一歩外に出た世界の見え方をどのように変えるのでしょうか。本展では、アーティストや訪れる人の一人ひとりが、展覧会の「外」から持ってくる経験、そして展覧会の「内」から外へと持ち帰る体験のつながりに注目します。 5人の出展アーティストは作品を通し、完成された形態よりも、こうした変容そのものを見つめます。それは画然とした境界を、周辺環境、物質、社会、制度といった側面から問い直す実践です。ウォーキングツアーや〈注釈 (Footnote) 〉、そして陳列館内に設けられた資料・考察・記録のためのスペース〈中庭〉は、内と外、アートとそうでないものといった一見硬直した区別を、相対的なものへと再構成する試みです。 近年におけるインターネットやソーシャルメディアへの絶え間ない接続や刺激は、ものごとに対する両極化した「確かさ」の感覚を産んでいます。政治的・社会的な分裂や不均衡が拡大し、差異への無関心が広がる今日、〈敷居/閾(しきい)〉がもたらす多義的な体験は、互いから遮断された情報の流れを再考させてくれるでしょう。本展が、アートを通して中間にある景色を見出し、私たちの周りにすでにある環境と新たな方法でつながりを持つきっかけとなることを願います。 アーティスト うらあやか、唐沢絵美里、ジャスミン・重村・リー、横手太紀、吉濱翔

名称:「敷居を踏む Step on the Threshold」東京藝術大学大学美術館
会期:2024年3月23日(土)〜2024年4月7日(日)
会場:東京藝術大学 大学美術館 陳列館
開館時間:10:00 〜 17:00
休館日:3月25日〜27日、4月1日〜3日は休館
入場料:無料
住所:〒110-8714 東京都台東区上野公園12-8
TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
URL:東京藝術大学大学美術館

「敷居を踏む Step on the Threshold」は、訪れる人を屋内と屋外、アートと自然、そして日常生活と美術制度のあいだの空間へと招く展覧会です。本展では、私たちが当たり前に受容している境界線の〈敷居/閾(しきい)〉に存在するアートのあり方を探ります。 さまざまな媒体で活動する5人の現代アーティストの作品を紹介すると共に、会期を通したワークショップやパフォーマンス、ウォーキングツアーによって、展示空間としてのギャラリーの内・外を解きほぐすことを目的としています。
日本において現代アートは、しばしば「敷居が高い」と形容されます。また、日本家屋に一般的に見られる敷居は、建具のためのレールであると同時に、空間と空間を区切る〈敷居/閾(しきい)〉でもあります。敷居を踏まないという風習は、そこに在っても関わりを避けるものとしての閾を浮かび上がらせます。こうした意味で〈敷居/閾(しきい)〉は、変容の過程における座りの悪い「中間の形態」としても理解されます。しかし、ドイツの思想家ヴァルター・ベンヤミンが指摘したように、それは新たな現実が息づく「敷居の魔力」にもなり得るのではないでしょうか。
風の音や、無数にある石、私たちが日々出会う身近な物語は、どこからアートと銘打たれ、識別されるのでしょうか?日常の体験は、私たちのアートの受容をどのように彩り、ギャラリーの中での出会いは、一歩外に出た世界の見え方をどのように変えるのでしょうか。本展では、アーティストや訪れる人の一人ひとりが、展覧会の「外」から持ってくる経験、そして展覧会の「内」から外へと持ち帰る体験のつながりに注目します。
5人の出展アーティストは作品を通し、完成された形態よりも、こうした変容そのものを見つめます。それは画然とした境界を、周辺環境、物質、社会、制度といった側面から問い直す実践です。ウォーキングツアーや〈注釈 (Footnote) 〉、そして陳列館内に設けられた資料・考察・記録のためのスペース〈中庭〉は、内と外、アートとそうでないものといった一見硬直した区別を、相対的なものへと再構成する試みです。
近年におけるインターネットやソーシャルメディアへの絶え間ない接続や刺激は、ものごとに対する両極化した「確かさ」の感覚を産んでいます。政治的・社会的な分裂や不均衡が拡大し、差異への無関心が広がる今日、〈敷居/閾(しきい)〉がもたらす多義的な体験は、互いから遮断された情報の流れを再考させてくれるでしょう。本展が、アートを通して中間にある景色を見出し、私たちの周りにすでにある環境と新たな方法でつながりを持つきっかけとなることを願います。
アーティスト
うらあやか、唐沢絵美里、ジャスミン・重村・リー、横手太紀、吉濱翔

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