「長澤耕平 日本画展 ー夜の森へー」日本橋三越本店
- 2025/10/9
- 東京
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名称:「長澤耕平 日本画展 ー夜の森へー」日本橋三越本店
会期:2025年11月12日(水) ~ 2025年11月17日(月)
会場:日本橋三越 本館6階 美術特選画廊
最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店

SM
今回の展覧会のタイトルを「夜の森へ」としました。
夜 、アトリエ近くの小さな森に分け入ります。 街灯のあかりと夜の空が暗い葉叢の間からわずかにのぞきます。 風に触れる葉ずれの音 、土 のにおいと落ち葉を踏む感触 、虫の声。たくさんの気配に囲まれながらも、ものの形は暗さの中に溶け、形が溶けて無くなるからこそより濃 厚にその気配を感じます。そして感覚は普段目に見えない世界にまで広がってゆきます。広がっていく気がします。木と木の関係 、木と生き物の関係 、微生物と有機物の複雑に絡み合った集合体としての土、根、地下の世界。その感覚自体は願望や妄想の類かもしれません。ただそうした目に見えないネットワークはそのものの形として現れていないだけで確かに存在はしているわけで、たとえ妄想だとしても、その一端に触れた気になることは私の創作にとって重要なのです。想像力を呼び起こしてもらうために、そして世界の霊力を絵の中に少しでも注入するために、今日も夜の森に出かけて行きます。
私にとって何 かを描く上で大切なことは 、描かれたものの中にあるいは背後に「世界」があるように感じられるかどうかです。 世界の全部を画面に収めることはできませんので、限られた対象によって象徴的に表すことになるわけですが 、私が考えるにそれは記号的な操作では成就しません。描く手つきそのものが問題になります。描かれたものが世界を獲得する瞬間は、記号と記号の間に落ちるごく微妙な色と形・強さのバランスの 調整によって不意に立ち現れます。どうすればそうなるのかという答えを私は持ち合わせていません。ただ、制作中途における「まだ世界になっていない」という判断と、それが現れるまで調整を続けるという試みがあるだけです。
それぞれの事物は関係性の結節点として存在していますから、そしてその関係性はあまねく全世界に広がり繋がっていますから、たったひとつの小石でも花びら一枚でも、良く捉えることができたならば 、地と図の反転として世界全体を捉えることともなり得るのです。なにを大それたことを、と思われるかもしれませんが実際描いているとたまさかそういう瞬 間が 訪れて、自分でやっていることなんだけれど「へぇぇ」とか「ほぉぉ」とか声が出たりするんです。本当です。そしてその感 嘆は人にも多少なりとも伝わるものだと信じています。
この度 、概ね三つのシリーズの作品を出品しますが 、それぞれ描かれた対象を起点として世界の総体に向かって見る人のイメージが誘われていくことを願っています。
長澤耕平


12号








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