「私のリサ・ラーソン(追悼リサ・ラーソン展)」のこぎり

「私のリサ・ラーソン(追悼リサ・ラーソン展)」のこぎり

名称:「私のリサ・ラーソン(追悼リサ・ラーソン展)」のこぎり
会期:2024年4月12日(金)- 2024年6月2日(日)
会場: のこぎり
開廊時間:水・木・金: 12時-19時(WEBサイトより予約が必要です)
 土・日・祝日: 12時-19時(予約の必要はありません)
休廊日:月・火(祝祭日の場合は営業します)
住所:〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町5-17 第一西尾ビル2F
TEL:03-6712-7878
URL:のこぎり

「私のリサ・ラーソン(追悼リサ・ラーソン展)」のこぎり
「私のリサ・ラーソン(追悼リサ・ラーソン展)」のこぎり

ギャラリー「のこぎり」は、2024年3月11日に逝去したスウェーデンの陶芸家リサ・ラーソンを追悼する展覧会「私のリサ・ラーソン / 追悼 リサ・ラーソン」を開催します。本展はリサと交流のあった個人の視点で彼女との日々を回顧するものです。
プライベートに撮影した写真や制作過程での原型、関係者の回想など、これまで未公開であった資料が掲示されます。通常の作品展とは異なる形でリサ・ラーソンを追悼します。
※近接する「TONKACHI,6」では、本展のギャラリー・ショップという位置づけでリサ・ラーソンのアイテムを特集しております。ぜひお立ち寄りください。
・本展について
リサは、人生は60歳から80歳までの20年間が一番いい時よ、と言った。それを聞いたとき、そんなに高齢になってからなの?と意外に思った。
私は彼女の「いい時期」の後半部分から始まって、その後の「年を取るのは大変だ」と言うようになった晩年に至るまで、2つの時期を通してリサと一緒に仕事をしてきた。
最初の頃の話は、今思うと夢のようだ。私はリサとFAXでやり取りしながら、二人だけで仕事を進めていた。小さな小さな仕事からスタートした。もちろんマーケティングなんてない。締切だってない。見積もりだってない。空想とプロダクツの区別が未分化な、私信に少し仕事が混ざったような、それは文通のようなやり取りだった。
その頃の私は30歳を超えたところ、後にトンカチの代表になる相棒のKは20代なかばで、仕事にどっぷり浸かっていた。会社はトンカチの前身となるパワーショベルで、私はデザイナーと呼ばれたことはないけれど、そんな風な仕事をしていた。人を楽しませて、かつ他人も楽しませることが出来る仕事が、どんな事より面白いのだということも、公私混同することこそが、自由を得る方法なのだということも、全部そこで知った。そしてそれ以外のことは、リサと仕事をすることで全て教わった。本物のアーチストと、力不足であるとわかっていながら、時には二人三脚で仕事しなければいけない状況を経験した。
私はリサに憧れていた。私はかわいくてオシャレなものが好きだったから、彼女の作品は正にその頂上にあるものに見えた。だから仕事をしたかったのかというと、そんな前向きなビジネス思考はなくて、突然生まれた仕事で反射的に彼女の名前を出したことから、彼女にコンタクトする必要が生まれ、会社公認でファンレターを書く機会がやってきたのだ。
そこからはじまって、すぐに時間が流れた。その時間の1%くらいだけが記録に残り、他は全部どっかに飛んでいってしまった。この展示はその1%の記録の断片だ。飛んでいった99%は、風に吹かれてたどり着いたところで花や樹木になるのだろうか(そうだといい)。
私はリサと文通をしていたあの頃が好きだ。私が私であった時代。私がしたいのは、今も昔も、文通から始まる恋のようなことなのだ。きっと、あの頃の私は随分と今より純粋だったし、会社も、社会も、仲間も、もう少し無垢だったに違いない。
最後の数年はリサと前のように仕事を進めることができなかった。けれどリサの子供たちが彼女の体調を見計らって意向を確認してくれたり、ミーティングを設定してくれたことで、仕事を進行することができた。これは家族にしかできない献身だったと思う。彼らのお陰で、リサと私たちは最後の最後まで可能な限り仕事をすることができた。それはリサにとっても重要なことだったのだと思いたい。私は文通のような仕事でしか辿り着けない場所だってあるんだと思う。リサとその家族の皆さんに感謝したい。
トンカチを代表して
M.S

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