名称:「石井佑果 泉・ピタゴラスコンマ編」日本橋三越本店
会期:2024年12月18日(水) ~ 2024年12月23日(月)
会場:本館6階美術 コンテンポラリーギャラリー
最終日午後5時終了
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店
過去の絵画を参照しながら要素を操作し組み替えてみたり、無関係な ものを唐突に引き合わせることでひとつのイメージを作ります。それは 具体的にきっぱりと描き切れる図像であることが私にとって重要です。 度々登場するステレオタイプな西洋絵画を連想させるモチーフや、アル ファベットやトランプマークなどの記号的な要素は特別な意味付けでな くあくまで単なるパーツであって、それは絵画的な諸要素をより簡潔に、 例えば線を線として、描きを描きとして、塗りを塗りとして、異なる単位 の仕事を整理して扱うための手段です。それらが過不足なく合わさった 時の新しい場の見え方、どのように絵であるか ( どのように絵でないか ) のひとつの可能性をその都度探し、決定します。
アングルやデュシャンの有名作品のタイトルでもある「泉」という言葉は、 途絶えず水が湧き出るイメージから永遠性の象徴であり、豊かな創作 意欲、才能や富の比喩にも使われますが、個人的には清らかなような 胡散臭いような、そんな印象です。今回絵の中では噴水だったり、スプ リンクラー ( 血が噴き出す蛇や桃 ) だったり、壺から溢れる水だったり、 あとは漫画表現の「ふき出し」として扱いました。また、ピタゴラスが 響きの完全さを目指して作ったかつてのドレミファソラシドの音律には、 計算違いによる微妙な音のズレ ( ピタゴラスコンマ ) がありました。これ は鍵盤楽器において純粋なハーモニーの代わりにメロディーが破綻する 問題だったのですが、この話は自分の制作における現在の違和感に重 なりました。本来一体であるべきものの中で起こる衝突とズレ、全体感 を守るための取捨選択の中で邪魔になる雑味の部分において、従来型 でない新しいバランスの発見が今後の課題です。
わざとらしさ、親切さ、明るさ、嫌らしさ、清潔さ、優雅さ、軽薄さ、 単純さ、純情さ、冷たさ、可笑しさ、明快さ、そのあたりからの逆算と 描画の繰り返しが今のところの私の制作です。瑣末なこだわりは変わって いきますが、自分が描いていても全くもって身近でない「絵画」と呼ばれ る存在に、私はいつまでも憧れと反感を持っています。
石井佑果
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