名称:「学びの歴史像―わたりあう近代」国立歴史民俗博物館
会期:2021年10月12日(火)~12月12日(日)
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B
料金:一般:1000円 / 大学生:500円
※総合展示もあわせてご覧になれます。
※高校生以下は入館料無料です。
※高校生及び大学生の方は、学生証等を提示してください。(専門学校生など高校生及び大学生に相当する生徒、学生も同様です)
※障がい者手帳等保持者は手帳提示により、介助者と共に入館が無料です。
※半券の提示で当日に限りくらしの植物苑にご入場できます。
開館時間:9時30分~17時00分(入館は16時30分まで)
※開館日・開館時間を変更する場合があります。
休館日:毎週月曜日(休日にあたる場合は開館し、翌日休館)
主催:大学共同利用機関法人人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
住所:〒285-8502千葉県佐倉市城内町117
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
URL:国立歴史民俗博物館
「人々は何を学んできたのか、なぜ学ぶのか」について、19世紀後半以降、日本列島に近代国民国家が成立していく様相とともに、「学び」という視点から紐解きます。狭義の「教育史」ではなく、幕末維新期の世界認識と自国認識、明治社会における旧幕臣の役割、富国をめざした博覧会、衛生観念の導入と相克、アイヌにとっての近代、国民をつくるための学校教育のしくみなど、さまざまな切り口から展示を構成し、近代における「学び」の意義を考えます。とりわけ、伝統と近代、欧米とアジア、中央と周縁、強者と弱者など、それぞれに緊張感をはらんだわたりあいを伴いつつ、教育や学知を通じて「国民」が生み出されていく過程を多面的に明らかにする企画です。
みどころ
- 幕末から明治という怒涛の流れの中にあった「学び」の姿を、対外関係史、文化史、経済史、医療・衛生史、アイヌ史などから読み解く
- アイヌ民族の歴史や言葉、首里や八重山の近代関係資料など、全国から多数資料を借用し、一堂に会する
- 「ブラントン日本図」や「元ト昌平阪聖堂ニ於テ博覧会図」など初公開の資料も含め、歴博の豊富な館蔵資料を最大限に紹介
- 私たちにはなじみのない、初代の「君が代」のメロディなどの「聴く展示」
展示構成
※章の構成と出品作品は変更になる場合があります。
第1章 世界と日本の認識をめぐる〈学び〉
明治維新前後の日本列島の人々が、世界や日本についての知識をどのように獲得して深めたのか、また黒船に乗ってやって来た欧米の人々がどのようにして日本をめぐる情報を獲得し蓄積していったのか、近代の出発点における、その内外からの〈学び〉の様相を、言語習得と地理情報という二つの視点から見ていきます。言語習得の面では、日本の知識層による世界情報の入手源を、漢文経由とオランダ語・英語経由の情報摂取に分けて考えます。地理情報の面では、近世に生み出された日本地図をめぐる情報が、海外に伝わることで、日本地理認識をめぐるいかなる相互作用が起こったのか、海図の進化を中心に追跡していきます。
第2章 明治の文化・教育と旧幕臣
明治維新が近代化の出発点だったとすれば、それ以前の政権たる徳川幕府は近代化に反する存在だったのでしょうか。教育をはじめとする文化面での近代化は、どのような担い手によって推進されたのか。洋学者の登用や海軍・陸軍の創設にみるごとく、実際には近代へのスタートは幕府によって切られていましたし、幕府を支えた人々(旧幕臣)は明治の新しい社会でも貢献を続けました。ここでは維新前夜から明治期における幕府や旧幕臣の役割に注目し、狭義の文化・教育面のみならず、政治・行政・経済などの分野にも視野を広げ、彼らによって発揮された「学知」にもとづく主導性を詳らかにします。
第3章 博覧会がめざした「開化」「富国」
19世紀後半は、「博覧会時代」とも呼ばれます。1851年のロンドンを皮切りに、欧米諸国で万国博覧会が開催されました。「博覧会ブーム」は、世界に広がっていきました。その波は、国民国家化の緒に就いたばかりの日本にも及んでいきます。「近代」あるいは「文明」への欲望を掻きたてられていた明治日本は、多彩な学知に触れる場としての役割を博覧会に期待しました。ただしそのあり方は、明治期を通じて一貫していたわけではありません。担い手や陳列される品物、そして「学び」の意味は、時代状況に応じ変容していきます。本テーマでは、内国勧業博覧会(1877年)をひとつの転換点と見て、以前を「開化」、以後を「富国」のキーワードで読み解きます。
第4章 「文明」に巣くう病
19世紀から20世紀なかばにかけて、眼前にあらわれた病とむきあうなかで、〈健やかなる者〉や〈病める者〉が、さまざまな知を動員して病と折りあいをつけようとしてきた歩みの一端をみつめます。それは、人と病とのたたかいの歴史では、かならずしもありません。そこからみえてくるのは、病のある社会を、病にとらわれた生を、どのように生きるかをめぐる試行錯誤や葛藤、病と対峙していたはずが、いつのまにか人や社会同士が病をはさんで対峙することになる場面など、一筋縄ではゆかない物語です。いまや他人事ではなくなった、病と隣りあわせの世界の生き方を、「病をつかまえる」「生命をまもる」「病とともに生きる」という3つの視角から歴史的にとらえ、考えます。
第5章 アイヌが描いた未来
近代国民国家に編入されたアイヌ民族は、抑圧を腹背に受けつつも社会と主体的にわたりあっていました。本章では3つのトピックからアプローチを試みます。「19世紀の学知とアイヌ社会」では、近代以前のアイヌ社会の国際的環境を踏まえ、中華世界と日本、ロシアという三国の学知の仲立ちをした存在としての可能性を提示します。「近代化の実践と学知」では、アイヌ自らが学知を身に着けつつ描いた未来像について考えます。「アイヌ社会と学校」では、アイヌ民族にとっての近代日本教育制度について、考えをめぐらせます。折しも昨年には国立の民族共生象徴空間(ウポポイ)が開設されました。その機にこの小さな一章が、アイヌの歴史・文化の理解にいささかなりとも貢献できれば、と思います。
第6章 学校との出会い
学校とひとびとが出会う過程をテーマにします。まず「領域のあわい」では、近世から近代への空間的、時間的な移行のありさまに注目します。ひとびとは大量に入ってきた近代的な価値観や制度を、自分たちの従来の生活や文化をもちつつ、どのように受け入れたり、拒んだりしていたのでしょうか。例えば体操という新しい科目をおこなう石垣島のこどもや、初めて聴く西洋音楽に苦闘する東北の士族の姿を手がかりに考えます。本展示全体としての最後のコーナーになる「「国民」形成」では、学校という存在を通じて「日本の国民」が作られていく過程について、学校儀式の歴史を糸口に追いかけてみます。
エピローグ
この展示を通じて、〈学び〉の近現代史を見てきましたが、未来の〈学び〉の場所は、果たしてどういうものになるでしょうか。未来の人々はどのように、どこで、何を学ぶのでしょうか。〈学び〉に出会った明治の「少女」とともに、想像してみませんか。
【展示プロジェクト委員】
■展示代表:樋口 雄彦(国立歴史民俗博物館 研究部歴史研究系 教授)
専門分野は日本近代史
主な著書に『沼津兵学校の研究』(吉川弘文館、2007年)、『幕末維新期の洋学と幕臣』(岩田書院、2019年)など
■展示プロジェクト委員 ◎:展示プロジェクト代表 ○:副代表
◎樋口 雄彦 国立歴史民俗博物館
○樋浦 郷子 国立歴史民俗博物館
福岡 万里子 国立歴史民俗博物館
小瀬戸 恵美 国立歴史民俗博物館
石居 人也 一橋大学社会学部
小川 正人 北海道博物館
落合 功 青山学院大学経済学部
木村 直也 元立教大学文学部
北原 かな子 青森中央学院大学
塩原 佳典 畿央大学教育学部
高木 博志 京都大学人文科学研究所
谷本 晃久 北海道大学文学部
保谷 徹 東京大学史料編纂所
得能 壽美 法政大学
主な展示資料
第1章
慶應義塾入社帳 慶應義塾図書館蔵
イムレイ社刊 日本南部沿海図 明治3年(1870) 国立歴史民俗博物館蔵
ブラントン日本図 明治9年(1876) 国立歴史民俗博物館蔵
第2章
開成所物産学入学姓名記 文久2年(1862) 国立歴史民俗博物館蔵
蘭伝軍太鼓目録 慶応3年(1867) 国立歴史民俗博物館蔵
東京数学会社雑誌 明治10~14年(1877~81) 国立歴史民俗博物館蔵
第3章
元ト昌平阪聖堂ニ於テ博覧会図 明治5年(1872) 国立歴史民俗博物館蔵
第一回松本博覧会建言 明治6年(1873) 松本市立博物館蔵
第二回水産博覧会賞状 明治30年(1897) 野﨑家塩業歴史館蔵
第4章
疱瘡神の化身 明治8年(1875) 国立歴史民俗博物館蔵
コレラ病予防の心得 明治12年(1879) 国立歴史民俗博物館蔵
疱瘡絵「為朝大明神・だるま」 江戸後期 国立歴史民俗博物館蔵
第5章
蝦夷諸島一覧略図 文化年間(1804~18)か 国立歴史民俗博物館蔵
Chikoro utarapa ne Yesu Kiristo ashiri aeuitaknup oma kambi(アイヌ語訳新約聖書) 1897年 北海道大学附属図書館蔵
バチラー学園の鐘 だて歴史文化ミュージアム
第6章
八重山風俗図 明治23年(1890)頃 沖縄県立博物館・美術館蔵
明治25年6月「唱歌沿革取調書」 明治25年(1892) 旧開智学校蔵
一宮尋常高等小学校教育勅語等奉蔵箱 大正期 一宮町教育委員会蔵
エピローグ
笠木治郎吉画 下校の子供たち 明治32年(1899)頃 星野画廊蔵
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