「女子美術大学創立125周年記念展 ー教え育まれてきた才能たちー(明治から令和へ)」日本橋三越本店
- 2025/11/27
- 東京
- 「女子美術大学創立125周年記念展 ー教え育まれてきた才能たちー(明治から令和へ)」日本橋三越本店 はコメントを受け付けていません

名称:「女子美術大学創立125周年記念展 ー教え育まれてきた才能たちー(明治から令和へ)」日本橋三越本店
会期:2025年12月3日(水) ~ 2025年12月8日(月)
会場:日本橋三越 本館6階 美術特選画廊 [最終日は午後5時閉場]
住所:〒103-8001 東京都中央区日本橋室町1-4-1
TEL: 03-3241-3311
URL: 日本橋三越本店

作品名:Border No.20
サイズ:72.7cm×91cm
このたび、日本橋三越本店では、「女子美術大学創立125周年記念展―教え育まれてきた才能たち―(明治から令和へ)」を開催いたします。
1900年に創立された女子美術大学は、日本における女子美術教育の先駆として歩みを始め、125年の長きにわたり、多くの芸術家を世に送り出してまいりました。本展では、その歴史の流れを背景に、明治から令和に至る同大学ゆかりの30名による作品を一堂にご紹介いたします。各時代を代表する作家たちの作品には、 それぞれの時代を生きた感性と未来へと受け継がれる創造の力が息づいており ます。125周年を記念するこの機会に、世代を超えて培われてきた芸術の系譜をどうぞご高覧いただきますようお願い申しあげます。
日本橋三越本店
渚から 生死の反復
5年前。わたしたちは新型コロナウイルス感染症「COVID-19」が拡大し蔓延する渦中にあった。 そして、それは世界を丸ごと呑み込むパンデミック状態へと一気に加速していった。そして、わたしたちの暮らす日本ではようやく感染症の第五類に分類され厳しい規制から解放されるのは2023年5月のことだった。3年半近い期間をわたしたちは、危機的な状況下で過ごすことになったのだ。
前回の開校120周年記念展「Promising」に、わたしは「渚にて」という短文を寄稿した。執筆中、わたしが暮らす葉山の森戸海岸さえも一時的に立ち入りが禁止されていたのだ。それでも漁師のひとたちが出入りする細い裏道を通って、波打ち際に立ち、海と陸、海と空、水平と垂直のつながりが世界の原点であることを確かめ、それが表現の自由とつながると感じ、次世代を担いつつある、女子美術大学出身の表現者たちに応援の文章を書いた。まさに「渚にて」拙文を紡ぐことが出来たのだった。
それから5年が経過し、同じ場所が国外からの訪れたひとたちも含む信じられないほどの多くの来訪者で賑わっている。自動車もコロナ前に比べて溢れるほど町中にやってきている。あまりに大きな変化は、まるでそんなことがなかったように記憶を崩壊させてしまう。実際、この5年の経過を、順番を間違えずに思いかえすことはだれにとっても難しいのではなかろうか。しかし、その困難な時間のなかでこそ芸術表現はしっかりと探求することができたはずだ。
5年後の今回は125年という、改めて歴史を刻むことが確認できるたいせつな記念の年に当たる。出品作家数に関しては前回7名。今回はなんと30名。しかも、重要な物故作家(三岸節子、片岡球子、 堀文子)も含まれている。そして、最年少の出品作家(後藤瑞穂)は2001年生まれ。まさにこの5 年間は彼女にとってもみずからの表現世界の確立のための貴重な時間であったにちがいない。
世代を超えて、125年にまで達した時間の流れを、本展は、そのまさに現在形として展示から感じさせてくれるはずである。5年前にすでに高い評価を得ていたひとたちも、コロナ禍にあっては、みずからの表現の動機を把握しなおし、同時に表現の手法も検討し、明らかにつぎのステージへと展開を遂げている。そのことも、今回の展示が、わたしたちに教えてくれるだろう。
「渚にて」苦しみながら、わたしは、前回の展覧会の意味を考えつづけた。そこにはまだはっきりとパンデミックという特別な状況が、作品に表れていたわけではなかった。作品もまだそれが制限された「渚にて」生まれたものだとは明言できなかったのだ。
しかし、今回の展示までの時間の経過は、もっともわたしたちに解放された時空を体験させてくれる場所のひとつである「渚から」さまざまな表現の自由さと多様さとわたしたちを導いてくれるはずである。感染症、そして、2022年春のロシアによるウクライナ侵攻にはじまる戦乱の厖大な数の犠牲者。どのような時代でも生死は繰り返す。ただ、この5年間ほどその反復が一気に激しさを増したことはあまりなかったのではなかろうか。その生死の波が、激しく打ち寄せ、引いている解放された渚からこそ新たな表現世界が浮きあがってくることをわたしは本展に期待したい。
美術史家・美術評論家、女子美術大学客員教授 水沢勉









最近のコメント