「伊藤公象 ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」ARTS ISOZAKI

「伊藤公象 ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」ARTS ISOZAKI

名称:「伊藤公象 ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」ARTS ISOZAKI
会期:2021年9月18日(土)〜2022年3月27日(日)
開館時間:13時〜18時
料金:無料
休館日:月曜日、火曜日(祝日は開場)、年末年始(12月27日〜1月9日)
住所:〒310-0011 茨城県水戸市三の丸1丁目4−17
TEL:070-2800-9585
URL:ARTS ISOZAKI

ARTS ISOZAKIでは2021年9月18日(土)から3月27日(日)まで、当ギャラリーで2回目となります伊藤公象の個展「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」を開催しております。12月26日(日)まで行う予定でしたが、3月に作家の図録が刊行されるため延長させていただく運びとなりました。
 伊藤公象は1932年に金沢の彫金家の長男として生まれ、十代の頃に陶芸家のもとに弟子入りしましたが、その後は伝統の世界から離れ、美術という概念を問い直すような新しい表現を追求してきました。ある時は土を凍らせ、ある時は乾燥による土の収縮や亀裂を創作に採り込むなど、自然現象を活かした独自の造形は早くから注目を集めました。1978年にはインド・トリエンナーレ、1984年にはヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として参加するなど、その活躍の場は国内外に広がり、土の造形のパイオニアとして高い評価を得ています。現在も笠間市の「伊藤アトリエ」を拠点に、89歳というご高齢ながら、茨城県から世界に発信する現代アーティストとして、旺盛な創作活動をされています。
「アトリエの1Fは造形制作の現場、住まい2階の小部屋は制作の構想を思索したり、パソコン、コピー機、書架や資料、試作品などが約半世紀の間にぎっしりと溜まっている。散らかっているようだが、どれも捨てがたいのだ。妙なもので、気に入らない試作品にも後になって“おやっ”と思う発見がある。昭和一桁の身は紙になぜだか執着があって、さまざまな情報をパソコン内だけでなく、プリントして読む癖がある。このA4プリントがバカにならないくらいファイルされ、書架やダンボール箱に詰め込まれている。近く卒寿を迎えることから、この際プリント資料は処理することにして、家庭用のシュレッダーを購入した。静かな擬音と震動、刻まれて行く記録紙片は『消された記憶』。しかし裁断された紙片の山は美しい。こちらも美しい陶土の泥漿に混ぜ合わせる作業を繰り返す。大きな器で一度に混ぜることは出来ない。ひたすら小さな容器で泥漿と紙片を無心になって掻き混ぜながら新作の準備を進める。新作への批評はまな板の上にある。」(伊藤公象)
 上記の文は、来春の発行へ向けて、現在準備中の伊藤公象画集のために寄せられたあいさつの一部です。半世紀にわたり活躍してきた伊藤公象の歩みを縮約しようとする画集の企画が進行しています。それに作家自身がシンクロして生み出された新作についての、簡潔にして委細を尽くした解説になっています。
 本展タイトルである「ソラリスの海」は、有名なSF小説のものを借用しました。海全体が一つの生命体になっている惑星で、宇宙飛行士の記憶が海によって形象化されるという設定の物語です。今回展示される新作は、シュレッダーによって「消された記憶」が泥漿と混ぜ合わされ、焼成されて、まるで沸き立つ海のような形象が出現します。伊藤公象の半世紀の記憶が作品として回帰して目前にあります。「新作への批評はまな板の上にある」と書いてありますが、それを見る私たちの記憶がまな板の上にある、という感覚になることでしょう。是非この機会に伊藤公象の「ソラリスの海《回帰記憶》のなかで」をご高覧いただけましたら幸いです。

関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

ピックアップ記事

  1. 「第十四回 I氏賞受賞作家展」岡山県立美術館
  2. わが街ながのゆかりの作家展 中村明個展「混ポジション」長野市芸術館
  3. 「東京造形大学 写真研究所 ―ミクロな視点とマクロな視点―」BankART KAIKO
ページ上部へ戻る