名称:「海老塚耕一展 空無から生じる風景 — 開く・可視」多摩美術大学美術館
会期:2021年12月4日(土)ー2022年1月17日(月)
休館日:火曜日、年末年始[12月28日(火)―1月4日(火)]
開館時間:10:00ー17:00(入館は16:30まで)
但し、1月9日、10日は短縮開館12:00ー17:00
入館料:無料
主催:多摩美術大学
企画制作:多摩美術大学芸術学科、多摩美術大学美術館、海老塚耕一教授退職記念展実行委員会
出品協力:世田谷美術館、鈴木志郎康
学内協力:多摩美術大学アートアーカイヴセンター、多摩美術大学映像センター
協力:養清堂画廊、勝沢運輸株式会社、株式会社ハシモトコーポレーション
住所:〒206-0033東京都多摩市落合1-33-1
TEL:042-357-1251
URL:多摩美術大学美術館
現れるときのその現れそのものに関心を持つとき、表現の実験は始まり、見えない場所への航海は冒険を誘う。
外部を作り、内部への扉をそっと開く眼差しを持っている。外部とは肉体をさらすことのできる、空無の風景ということになるのかもしれない。そして作品は「空無から生じる風景」ということになる。目的のない目的のために制作をするということなのだが、はたして僕は「水を汲み、薪をはこぶ」ことができるのだろうか。
— ある日の制作ノートより(2021)
このたび多摩美術大学美術館では、2022年3月に多摩美術大学美術学部芸術学科教授を退職する、美術家・海老塚耕一(1951ー)の個展を開催いたします。
海老塚は石・木・鉄・水といった異素材を組み合わせ、空間に拡張していくような彫刻を作ります。1980年代は主な素材に木を使用し、鑑賞者を内包する舞台装置のような作品「連関作用」シリーズを展開。90年代以降は「境界・端・限界」への関心から、それらを思考するための要素として定型をもたない「水」や「風」を主題に、彫刻のみならず版画作品も発表します。近年はこれまでの主題が折り重なることで出現する、多層的な空間作品を作ります。
作家がいかに世界を捉えたのか、その眼差しが作品に顕在するならば、海老塚の作品は形態を変えながらも、変わらない作家の姿勢を色濃く表すものと言えるでしょう。それは視覚により他者を捉えるのではなく、空間を通して世界に触れる術と言えるでしょうか。「見える」ことと「わかる」ことの不確かさを問い、流れるもの、固定されないもの、浸透するものと、物質を通じて交感しようと試みます。
最近の作品において、海老塚は「空無から生じる風景」という言葉をあてています。海老塚が作り出す空間の中には、絶えることのない緩やかな流れが生まれます。本展は、新作の彫刻、版画作品から作家の現在を紹介するとともに、初公開となる作品図面や資料などから足跡を辿り、作家性を紐解きます。
海老塚耕一(えびづか・こういち)
1951年、神奈川県横浜市生まれ。
画家、詩人として活動し、美術教育にも携わった父・市太郎の影響により、 美術・芸術を身近な存在として育つ。1971年に多摩美術大学美術学部建築科に進学。生涯の師として仰ぐ東野芳明と出会う。1979年に副手に着任して以降、非常勤講師、専任講師、助教授、教授と多摩美術大学において長年にわたり後進の育成に従事する。副手時代に芸術学科新設に携わるとともに、生涯学習プログラムでは「あそびじゅつ」の考案など、誰もが美術と触れ合える機会の創出にも尽力した。主な個展に「眼差しの現象学―身体・素材・記憶」(2002年、神奈川県民ホールギャラリー)、「呼吸する風の肖像」(2009年、渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館)、「水と風の現象学 ―実体変化として―」(2020年、東京アートミュージアム)。受賞歴に「第6回インド・トリエンナーレ」ゴールドメダル(1986年)、第15回平櫛田中賞(1991年)、第19回現代日本彫刻展 神奈川県立近代美術館賞(2001年)、第14回タカシマヤ美術賞(2003年度)等。主な収蔵先に東京国立近代美術館、世田谷美術館、神奈川県立近代美術館等。
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