名称:「Artist Voice II: 有元利夫 うたのうまれるところ」慶應義塾大学アート・スペース(KUAS)
会期:2022年2月14日(月)〜4月22日(金)
休館日:土日祝・休館
場所:慶應義塾大学アート・スペース (三田キャンパス 南別館1階)
費用:無料
住所:〒108-8345東京都港区三田2-15-45
TEL:03-5427-1621
URL:慶應義塾大学アート・スペース(KUAS)
量」と「線」を考慮に入れてはじめて脳みそが必要になってくる。
「量」も、そして特に「線」は、想像力が生み出したものだからです。
——有元利夫『女神たち』美術出版社、1981年、p. 57.
新しい展覧会シリーズ「Artist Voice」は小さな展示室1室という施設の特性を生かして、作家の呟きや生の声を感じ取れるようなインティミットな展示を目指すものです。
第2回となる今回は、有元利夫の素描をとりあげます。有元がピエロ・デラ・フランチェスカなどによるルネサンス絵画を賞賛し、自らの芸術に取り込んだことは有名ですが、彼の素描作品についてはそれほど広く知られてはいません。特に作品として描かれた素描ではなく、ある対象を前にして写生したスケッチや、あるいは作品制作に直接繋がっていくいわゆるエスキースについては、これまでほとんど鑑賞者の目に触れることはありませんでした。しかし素描とは画家が頭の中のコンセプトを初めて現実世界に表現するものであり、完成した作品よりも純粋な着想の表現であるといえます。ある意味作品以上に芸術家の本質に迫ることができるメディウムでもあるのです。
本展で展示される有元の素描に目をやると、実にさまざまな芸術世界が広がっていることに気づくのではないでしょうか。有元は自らの芸術における素描類の重要性をはっきり認識していました。彼の素描は対象再現的なものではなく、むしろルネサンスの素描に倣ってより線の強さと量感を求めており、上で引用した文章のように、「線」と「量感」こそ、芸術家の想像力が問われる場だったのです。
有元は「見ているうちにどこからともなくチェンバロの調べが聞こえてくるような、そこに音楽が漂っているような画面」の制作を追求していました。本展に出品される作品は演奏会の音楽ではなく、バロックリコーダーを嗜んでいた芸術家が心の赴くままにアトリエで奏でる音楽に比することができるでしょう。展示室に満たされた静謐な音楽に、ぜひ耳を傾けてみてください。
(本ページ内全画像:©️Yoko Arimoto)
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