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中国NEWS 2009.03.21更新

「中国NEWS」2009・06

用語出所

中国の代表的な時事問題週刊誌『中国新聞周刊』の日本語版『中国NEWS』が月刊誌として創刊された。「生むべきか、生まざるべきか――一人っ子政策今昔物語」という創刊記念ロングリポートのほか、「負債に喘ぐ中国の大学」「第三の目で日中関係を見よ」「大量の汚泥はどこに」と、教育や外交、環境問題のスペシャルレポートもあり、なかなか読み応えのある内容である。
  中国の日本向け雑誌といえば、これまで『北京周報』(すでに廃刊)、『人民中国』などがあるが、いかにも宣伝臭が漂っていた。今回の『中国NEWS』のような、中国が直面する問題を深く抉(えぐ)り取る雑誌の刊行はきわめて異例なのである。
  さっそく友人や学生から、「これはやはり中国メディアの変化を反映したものか」という問い合わせを受ける。
◆中国の動向を知る格好のメディア
  答えは「ノー」である。というのも、これは日本で発行された雑誌であり、中国のメディアではない。中国のメディア政策の転換というより、中国の対外宣伝の方針が転換したことを示している。いくら斬新な雑誌が日本で発行されても、中国国内のメディア事情に何の影響も与えないだろう。いや、そもそも『中国NEWS』の記事は、もともと中国国内で発行されている『中国新聞周刊』の記事を翻訳したもので、この程度の記事は中国でも「読もうと思えば読むことのできる」レベルの内容だ。「これはすごい記事」と感じるのは、中国のメディア事情を日本の読者があまりにも知らないからだ。
  ただ、私が「読もうと思えば読むことができる」と指摘したのは、『中国新聞周刊』は一部8元(1元は約15円)で、1部0.5元から1元の都市報や経済専門紙に比べて割高であり、したがってこうした時事問題週刊誌は官僚や企業幹部といったエリート層の読み物であるといえるからだ。発行部数は公称20万部、ライバル誌の幹部は、それはひと月あたりの部数で、実売は5万部だと指摘する。真相は不明だ。政治や経済に関与できるエリート層に限られた読み物だけに、影響力はあなどれない。内容的にも、深層を抉る読み物でなければ相手にされない。メディアの管理当局から見ても、そうした層は、大衆紙の読者のように感情的に直接反応することもないので、深層報道を許している。
  したがって、こうした時事問題週刊誌の内容は、中国が直面する問題を知り、それをどのように解決しようとしているのかを知るための格好の材料になる。実は「時事週刊誌ウォッチング」は中国研究のいいテーマでもある。日本人にとって手に取りやすい日本語版が創刊されたということなのだ。現在中国にはこのような週刊誌が10種類近くある。ちなみに『中国NEWS』にも「立ち読み中国雑誌」として、週刊誌のいくつかのカバーストーリーを紹介している。だが、国営新華社発行で、最大のライバルである『瞭望東方周刊』と『瞭望』を紹介していないところがあまりにも狭量なところ。
◆対外宣伝方針の転換
  それにしても、これまで中国のいい面ばかりを報道してきた日本向け雑誌と違って、どうしてこのような客観的な報道の雑誌の発行が可能になったのか。それは中国外交の戦略が転換し、対外宣伝の方針が変わったからだ。
  温家宝首相が来日する約1カ月前、首相自身の論文である「社会主義初級段階の歴史的任務とわが国の対外政策に関するいくつかの問題」が発表されている。この論文では、中国の発展段階がまだまだ「社会主義初級段階」にあり、国際社会においても、グローバリゼーションという発展のチャンスを生かし、「平和的発展の道」を歩まなければならないと指摘している。そのためには、「対外宣伝活動を強化、改善しなければならない」とし、「全面的に、正確に、タイミング良く、わが国の改革・開放と現代化建設で獲得した成果を海外に紹介し、わが国に存在する問題を回避してはならない。生き生きとした多様な対外宣伝と交流の方式をうまく活用し、できるだけ国際社会が聞いてわかる、理解しやすい言葉と親しみやすく楽しいやり方で交流し、宣伝の有効性を高める必要がある。努力して、各方面が中国の発展と国際的な役割について客観的、理性的に見るようにいざない、友好的な国際世論の環境を作り出していく必要がある」と述べている。
  『中国NEWS』の創刊は、この一環であることはいうまでもない。ただ、創刊号を見て二つの問題を感じた。一つは、創刊号ということで、かなり力が入ったのか、興味深い特集をそろえたが、これがいつまで続くのかという点だ。中国の直面する問題は、浜の真砂のように尽きないのかも知れないが、本体の『中国新聞周刊』からの翻訳では間に合わないのではないか。
  もう一つの問題は、880円という高価な雑誌なのに、「中国政府要人最新リスト」と称して、16ページも党幹部の写真を並べている。何とも殺風景な宣伝である。表紙うらの見開き写真も、何のニュース性もない天安門広場写真。これでは従来の雑誌と変わらない。もっと思い切った誌面展開が必要だろう。

出版社: 日中通信社 (2009/06)

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