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気がついてみると、美の巡礼のような気持ちで世界の美術館を訪ね歩いて、もう十五年になる。
美術館の建物もさまざまで、古い城門あり、近代的な高層建築あり、なかにはまったくの普通の建物もあった。この中に名品が本当にあるのかしらといぶかりながら人目を入ったこともある。受付も小さく、廊下も挟い。ところが展示場に入って驚いた。セザンヌ、了不、スーラと名品が目白押しである。美術館というにはほど遠いいくつかの小部屋にすてきな作品がたくさん掛けてあった。ロンドン大学付属のコートールド美術館がそれである。この驚きと感銘を、帰国してから日動画廊で発行している雑誌「綸」で記事にした,こうして、私の美術館めぐりの旅は始まった。
私にとって、画商として本物の名品を見て歩くことはよい勉強になった。また、私のなじみやすい十九世紀印象派、後期印象派の名品を訪ねて歩く旅から、だんだんルネッサンス絵画、現代美術とはばも広がっていった。出版が決まってからは小さな美術館だけでなく、すでに知っている大きい美術館へもたびたび取材や調査のために訪れ、感激を新たにすることもできた。海外出張の合間の土曜日や日曜日が美術館めぐりの大事な日である。ヨーロッパではほとんどの町へは、私どもの支店のあるバリから飛行機での日帰り旅行となる。朝早く起きて飛行場へ向かう。なるべく午前中に先方の美術館に着くようにする。そして、閉館時間までいて、また飛行場へ戻る。日曜日の夜のパリは静かである。美術館めぐりはよく歩くので、帰るといつもへとへとに疲れていたが、名品を思い出しながら資料をまとめるひとときは楽しいものであった。そうして、たくさんの美術館を自分の足で歩き、私なりの印象記を書いてきた。
今回は、既刊の二冊に収録した美術館八十館も含め、世界の一五二館の美術館をひとつの本にまとめ、使いやすいガイド・ブックとした。絵画の美術館だけでなく、その岡で評価の高い工芸や彫刻の美術館も含めた。ベルリンのように世界情勢の変化によって展示館がかわったり、また改築、増築、移転で変化していくので再度取材に訪れなければならないこともあった。なるべく、正確な資料となれるようにと、直接現地に問い合わせたり、海外のいろいろな方にもお手伝いをいただいた。
名品との数々の出会いは私をリフレッシュさせてくれた。海外へ出掛ける機会があったらぜひ名品を訪ねていただきたいし、旅行になかなか出られない方にはこの本で世界の美術館めぐりを楽しんでいただけたら幸いである。私の旅はこれからも続く。世界中に何千館とある美術館をめぐることが私のライフ・ワークとなりそうである。
著作者:長谷川智恵子 (1993/07) 求龍堂
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