会期・会場 |
1987年4月28日(火)-6月7日(日)
東京国立博物館 |
1987年6月16日(火)-7月26日(日)
奈良県立美術館 |
1987年8月4日(火)-9月6日(日)
名古屋市博物館 |
1987年9月20日(日)-10月25日(日)
福岡市美術館 |
主催
東京国立博物館
奈良県立美術館
名古崖市博物館
福岡市美術館
大英博物館
日本放送協会
朝日新聞社
後援
外務省
文化庁
英国大使館
協賛
日本航空
N T T |
ごあいさつ
大英博物館と日本は,100年近い交流の歴史をもっています。
世界的な粘菌学者で日本民俗学の草分けのひとりでもあった南方熊楠(みなかた・くまぐす)は,明治25年(1892),英国に渡り,古美術部長サー・アーサー・W・フランクスの知遇を得て研究に励み,同館の東洋部図書目録の編纂などに大きな
業績を残しました。
国民的作家で朝日新聞社員でもあった夏目漱石は,明治33年(1900)英国に留学し,幾度か大英博物館を訪れ,異国での生活の寂しさを紛らわしていたことが日記からうかがえますし,日本の伝統文化と美術の海外へのよき紹介者だった岡倉
天心や,日本画家下村観山にも訪問の記録が残っています。
今回の「日本・中国美術名品展」は,同館の一角に日本ギャラリーが建設されるのを機に,そのアピールも兼ねて開催されるものです。東京国立博物館の学芸員を中心とする日本側
スタッフが大英博物館と協議を重ね,膨大な日本及び中国の古美術品コレクションから,最も優れた151件を選びました。この中には,世界的に知られた芸術作品も数多く含まれてい
ます。
大英博物館と日本の多年にわたる交流を思うとき,今回の名品展の開催は誠に意義深いことと考えます。この機会に,ひとりでも多くの方々にご覧いただければ幸いです。
東京国立博物館
奈良県立美術館
名古屋市博物館
福岡市美衛館
日本放送協会
朝目新聞社
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メッセージ
デーどッド・M・ウィルソン
大英博物館館長
大英博物館の理事会が,今回のような規模で所蔵品を貸し出すことに同意したのは,英国と日本の友好関係が,ますます深まっている事実を示しています。その内容は,理事会がこれまで国外への出品を許可したものの中で,最も価値があり,かつ,周到に準備されたものとなっています。ひとえに,日本の開催各館,並びに,そこで働く私たちの友人に敬意を表してのことであり,さらに,日本のみなさんが,自国の文化のみならず,常に親しい関係を持ち続けてきた中国の文明はもちろん,世界の様々な文化に対し,強い関心を寄せていることを十分に認識しているからでもあります。この文化に寄せる日本人の情熱には,私はいつも感嘆させられています。ですから,毎年,日本の主要都市で開かれる様々な展覧会の企画に,このような形で寄与できるのは嬉しい限りです。
理事会は,展覧会を4会場に巡回し,6ヵ月以上もの聞,館外に出すことを承認しましたが,これは,極めて異例のことで,日本の優れた組織力を高く評価しているからであります。
展覧会はまた,大英博物館が,日本コレクションのための特別ギャラリーの建設に乗り出すちょうどよい時期に開かれることになりました。世界の主な文化遺産を陳列している大英博物館の中に,日本美術専用の展示室を確保するのです。理事会がかつて手がけた中で,最も大きな,経費のかさむ仕
事の一つですが,これも日本の多くの友人の励ましと支援がなければ,着手するのも不可能だったでしょう。このたびの展覧会は,大英博物館の所蔵品を日本のみなさんに紹介し,日本ギャラリー建設基金を求める私たちのアピールを,広く世界の人々にも知ってもらうため企画した一連の展覧会の最初のものです。
1753年に大英博物館を創立した人々は,この博物館を,全世界からの資料が収集され,学者が人類の歴史をここ一ヵ所で研究できる総合施設として考えていました。実際,博物館の基礎となったサー・ハンス・スローン(1660-1753)のコレクションには,日本と中国を含む世界のあらゆる地域の古美術品が含まれていました。当時の西洋の学芸員たちは,世界をヨーロッパ中心に考える傾向かおり,初めのころは,収集品も地中海地方のものにかたよっていました。しかし,大英博物館の長い歴史の中で,私たちの視野も徐々に広がっていきました。知識を求める調査と旅行が進み,アジア,アフリカ,アメリカ大陸,太平洋の諸文明の豊かさがより一層知られるようになったのです。大英博物館は,これらの冒険でしばしば指導的な役割を演じましたが,東アジアの考古学の分野においてもそうでした。サー・A・W・フランクス(1826-97)が,すでに1860年から70年までの10年間,先頭に立って,この分野で精力的に活躍していたのです。大英博物館の有名な中国と日本美術のコレクションの基礎が築かれたのは,この時代でした。
この展覧会をご覧下さる方々は,大英博物館の中国と日本の絵画,青銅器,陶磁器,漆器の膨大なコレクションから選りすぐった作品に出合って,きっと満足して下さることと思います。とくに,サー・オーレル・スタインが敦煌から持ち帰った絵面頬については,これだけの数がまとまって出品されるのは,今回が初めてであります。理事会を代表して,本展開催のためご尽力下さいました関係各位に心からお礼申し上げます。