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散楽図浮彫 2007年10月25日(木)更新
白大理石、彩色
高82cm、幅136cm
1995年河北省曲陽県王処直墓出土
五代(後梁)・10世紀
河北省文物研究所蔵
散楽図浮彫は、唐木から五代初めにかけて義武軍節度使として河北地方で小勢力をもった軍閥の一人である王処直(863~923)の墓から発見されたものである。王処直の墓は、東西に小さな副室(耳室)をもつ前室と、その北側の墓主の棺を安置した主室からなるが、その内部はそれぞれ壁画や浮彫で装飾されていた。主室の北壁前面と東壁と西壁の北寄りの部分には、室内を飾るカーテン越しに湖石、牡丹花(富貴花)、鳥、峰、蝶などが見える庭園の景観が描かれていた。そして、その東壁と西壁のそれぞれ南寄りの部分には、この2面の散薬図浮彫と奉侍図浮彫が、あたかも墓主に対して生前と同様に宮殿の室内で侍るかのように嵌め込まれていたのである。
これらの募室内の壁面や浮彫などの装飾は墓主の安寧を願う為のものであるが、東壁の散楽図浮彫には、音楽を奏でる12人の侍女と指揮棒を持つ人物、西域風の服装をした小さな踊手2人が彫出されている。侍女たちは前列右から笙、箜篌(竪琴)、筝、琵琶、拍板、太鼓、後列右から方響、小鼓、縦笛、横笛を、それぞれ一心に演奏しているようで、その楽器特有の微妙な所作が見事に表現されている。これと向い合う西壁の奉侍図浮彫には、団扇、羽扇、皿、碗、化粧箱などを持ってゆっくりと進む13人の侍女と、その列を先導する小さな人物が彫出されている。侍女たちの手の仕草や顔の向きかげん等にみられる何気ない所作や視線は、相互に微妙に呼応しており、全体として生動感のある優れた群像表現となっている。また、散楽図、奉侍図の侍女たちは、いずれも大きな髻を結い豊満な姿をしているが、その表現は唐の玄宗が寵愛した楊貴妃を理想とする唐の宮廷趣味が、王処直の時代においても存続していたことを示している。
散楽図浮彫は唐以来の宮廷墓の装飾を特徴づける音楽と奉侍という2つの基本的な要素を継承するものであるが、その浮彫としての大きさや芸術性豊かな表現の点で当時の墓室装飾には他に類例のない優れた質をもっている。 出所:「中国国宝展」
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