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雲龍堆朱八角盒子 2007年12月16日(日)更新
【和:うんりゅうついしゅはっかくごうす】 |
【中:Yun long dui zhu ba jiao he zi】 |
明・清|彫刻・書画>雲龍堆朱八角盒子
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「大明嘉靖年製」銘
木製漆塗
高11.3、径20.7
明・嘉靖(1522~66)
上海博物館蔵
明時代後期において、漆芸活動がもっともさかんにおこなわれた時期は嘉靖期(1522~66)と万暦期(1573~1620)である。そして、これらの時代に制作された漆器には堆朱・堆黄・彫彩漆(紅花緑葉ともいう)をはじめ、存星・螺鈿・鎗金・箔絵・漆絵といったさまざまな種類の作品がみられ、それぞれに各時期の独特の作風が示されている点がよくみてとれる。
嘉靖期についていえば、この時期は堆朱・彫彩漆、それに存星がいちじるしく流行したときとして知られ、そのことはとくに、官営工場の作品において顕者である。事実、これら三種の官製漆器の道品はかなり多くみられ、しかも、それらのなかには多数の傑作がふくまれている。
この雲龍堆朱八角盒子は嘉靖期のそうしたものの一例であり、器形・文様・膨法など嘉靖期の彫漆の作ぶりをあますところなく伝えた作品として注目されるものである。
器体を八角形にととのえ、蓋表はふたつの四角形を組みあわせて十七の区画に分け、そのうちの中央の枠内に「寿」の字と戯れる顔面左向きの五爪の龍と霊芝雲を、その周囲の十六の区画内に瑚瑚た宝珠・如意頭・法螺・宝瓶など吉祥を示す雑宝文をあらわしている。肩と尻部の各面には左向きの五爪の龍と霊之雲、蓋・身の側面部各面には霊芝唐草を配し、また、高台外周にキーフレット文をまわしている。さらに、蓋表以外の器面の地は黄漆とするが、蓋表には黒味をおびた緑漆をつかって、波文や斜格子文などの地文をほどこしている。嘉靖期の官営工場出来の彫漆器で器体外面をこのように、びっしりと文様でうめつくすことは一般的であり、さしてめずらしいことではないが、これほどまでに多種多様な文様で器面全体を繁縟におおってしまう例はそれほど多くはみうけられない。このことはいわば、この作品のひとつの大きな特徴・を示したものといってよい。そもそも、嘉時期における官製の彫漆作品では、いくつかの例外をのぞいて、制作年代をしるす「大明嘉靖年製」の六字を刀刻した瑱金銘がほどこされ.ているのが通有である。この盒子においても、身の外底中央に同様の銘があり、この作品の制作時を知ることができるが、よくみると、この銘が小ぶりの字であらわされていることに気づく。この時期の形漆器にほどこされた銘をみると、こうした小さめの楷書体を示したものと、それよりはやや大ぶりの楷書であらわしたものとの二種類が見出される。そして、各々の銘をもった作品がそれぞれ異なった作風をみせている点が興味をひくところである。小ぶりの銘をもった作品は大ぶりの銘のあるものにくらべて、文様は細級であるだけでなく、地、もしくは地文の部分の空間がきわめてすくない。また、刀のつかい方も大ぶりの銘をもった作品に比して巧妙であり、全体にきっちりした仕上げをみせている。こうした両者のちがいはやはり、制作年次のそれを示しているものと解釈してよいであろう。
この大ぶりの楷書体であらわされた銘をもつ作品を、のちの隆慶期(1567~72)および万暦期初頭ごろの在銘品と照らしあわせてみると、それらが作ぶり、銘の大きさなどあらゆる点において酷似していることが理解できる。このことはとりもなおさず、大ぶりの銘を有する作品が同じ嘉靖期でも、時代の下がった隆慶期に近いころにつくられたことを示しているといってよいであろう。してみると、ここに掲げた雲龍堆朱盒子は小ぶりの楷書体をほどこしたものであり、大ぶりの銘をもつ作品以前に制作されたものということができ、あるいは嘉靖期の前半にその制作時をもっていくことができるかもしれない。
さらに、ここで目をひく点は、小ぶりの六字銘をもつ彫漆作品を見てみると、その数量は堆朱より彫・彩漆の作品の方がまさっていることである。そして、管のおよぶかぎり、小ぶり銘の推末器はほんの数点が知られてい見るのみであり、本品はいたって稀少価値の高い作品といえよう。なお、内部および底裏は黒漆塗りとなっている。出所:「上海博物館展」
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