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梁武帝 2008年08月10日(日)更新
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464~549年
蕭衍、字は叔達。梁の初代皇帝・武帝である。南朝の皇帝のなかで最も長い四八年の在位で、安定した治世だったことで知られる。残虐だったり無能だったりする皇帝が多い南朝のなかでは、ひときわ名君として名高い。
四七九年に始まった南斉は、五〇一年までの短期王朝だった。皇帝は蕭道成(高帝)から五代まで続いたが、まともなのは高帝と息子の武帝だけだった。四九八年、東昏侯(愚かな東の侯爵、という意味)が帝位についた。殺戮が趣味であるかのように、この皇帝は殺しまくった。朝廷の重臣たちも次々と殺され、蕭衍の兄も犠牲となつた。ここにいたり、ついに蕭衍は決起した。東昏侯を倒すと、その異母弟を皇帝に擁立(和帝)。そして、その和帝から帝位を譲られるかたちで、梁を建国し、皇帝となったのである。五〇二年のことだった。
武帝はその姓が示すように、斉を建国した蕭の一族である。本来ならば、同姓の国を滅ぼすのは、よくない行為だし、彼がいつ皇帝になろうという野心を抱いたかは、よく分からない。ともあれ、南斉末期があまりにもひどかつたので、彼の行動も支持されたのである。殺さなければ殺される。そんな時代だったのだ。
武帝は文武両道のオ能があり、邸宅には多くの文化人・教養人が招かれていた。仏教に熱心で、僧侶以上に修行をしたともいう。功績のひとつとして、国立の大学を設立し、 一般の秀才にも入学を許可し、それとともに国家試験に合格すれば、家柄に関係なく、高級官吏として採用する制度を作った。後に、「科挙」として知られる試験の先駆けである。武帝は自分が能力があったので、実力主義だった。試験を重視したのも、それゆえである。だが、この人事政策は庶民からは支持されたかもしれないが、門閥に頼って出世してきた貴族階級からは反感を買った。
この時代、経済も飛躍的に発展した。だが、それは貧官の格差も生んだ。富裕階層は浪費しまくり、その一方で、貧農は流浪し、世情不安の一因となつた。
華北を北魏が統一したのは四三九年で、それから約百年たった五三五年、その北魏は東西に分裂した。
これが梁に大きな影響を与えた。五四七年、東魏の将軍・侯景が、自分が制圧している一三の州をもって、梁に帰属したいと投降してきたのである。重臣のなかには反対する者もいたが、何もせずに一三州が手に入るわけだから、武帝はそれを受け入れた。当然、東魏は裏切った侯景討伐軍を出した。梁は武帝の甥の蕭淵明を司令官とする援軍を派遣したが、惨敗。蕭淵明は捕虜になってしまった。侯景もほとんどの軍勢を失った。
一年後、東魏に囚われの身となっている蕭淵明から、東魏は梁と和平を結びたいと考えているとの使いが来た。これを知って、侯景は焦った。自分の首を差し出すことが和平の条件ではないかと疑ったのだ。侯景は先手を打つことにし、反乱を起こした。侯景の軍勢は、 一気に主都・建康(いまの南京)を襲い、油断していた朝廷は宮城に立てこもるしかなかった。
勢いに乗る反乱軍は、いつのまにか一〇万もの大軍となり、宮城を包囲。食糧も尽き、城は陥落した。八六歳になっていた武帝は幽閉されてしまう。
だが、そのとき武帝は決して怒らず、反逆者に向かい、「さぞ疲れたであろう」という余裕と威厳を見せたという。武帝は幽閉されて三ヵ月後に亡くなった。皇太子・蕭綱が帝位についた(簡文帝)が、侯景に殺されてしまった。
だが、その侯景も五五二年に討ち取られる。梁は、その子たちが次々と帝位については殺され、結局、五五七年、武帝の九男の敬帝が、陳覇先に帝位を譲るかたちで、梁王朝は終わった。
梁から帝位を奪い、陳を建国した陳覇先は、宋を建国した劉裕のように貧しい家に生まれた。村役場に勤務し、油の倉庫番をした後、侯爵の使い走りになった。社会の最下層から皇帝にまで成り上がったのである。その侯爵が、軍の長官に栄転したのに合わせ、陳覇先も出世し、軍の中で実力を発揮しだし、注目され、朝廷にも影響力をもつまでになつたのである。
皇帝にまで上りつめたものの、陳覇先は即位して二年で亡くなつた(武帝)。甥が後を継ぐが(文帝)、それも短命で、その子が三代目となるが、 一六歳と若かったこともあり、叔父(文帝の弟)にあたる宣帝に退位させられてしまう。その宣帝は五八二年に亡くなり、その子の後主(皇帝に即位はするが、諡号に「帝」はないが即位した。これが最後の皇帝となる。後主は遊興にふけり、政務は宦官にまかせたので、国は乱れた。北を統一し南下してきた隋は、陳の都を攻撃するにあたり、後主の過失を並べたてたビラを三〇万枚配り、人々に、陳の皇帝に「天命」はないことを納得させたという。陳王朝は、五八九年、攻撃してきた隋の前に滅亡した。三三年しかもたなかつた。こうして、三一七年に始まる南朝は、終わつた。出所:『覇王列伝』大陸の興亡編
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