考古用語辞典 A-Words

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莫高窟第三二二窟南壁  2008年09月17日(水)更新

莫莫高窟第三二二窟南壁
【和:ばっこうくつだい三二二くつみなみへき
【中:Mo gao ku di 322 ku nan bi
隋・唐・五代|彫刻・書画>莫高窟第三二二窟南壁

仏説法図(模写 馬復旦)
泥本着色(ニ分割)
縦198.0 横149.9
初唐
  第三二二窟は、約三・五メートル四方と比較的小型の伏斗式方形窟で、正面西壁に開かれた大龕が隋代に行われた複式龕形式を踏襲していることからも、初唐時代最初期の武徳年間から貞観年間にかけての造営と考えられる。その時期は武徳七年(六二四)以後、シルクロードの交流が往時に復し、新たな中原の絵画が西の敦煙に及びその伝統的画風と融合して、未だかつてない一大変革の時期に当たる。
本図は、南壁を埋める千仏図の中央に区画された大画面説法図(窟内写真参照)で、北壁の同様の仏説法図と相対する。このように窟内南北両側壁の千仏図の中に仏説法図を配する形式は、窟構造や時代にかかわらず長く続いた伝統的形式で、敦煌石窟北涼期の第二七二窟からすでに見られる。
さてこの南壁仏説法図では、前代隋末唐初の定型化した仏説法図より尊像数を増し、仏前の小供養菩薩二体、中尊をコの字形にとり囲む左右各三体の脇待菩薩、左右二体ずつの飛天を描く。正面を向いて端然と坐す仏に対し、菩薩たちは、それぞれ思い思いのポーズをとって、互いに言葉を変わし合うかのように取り囲み、両面にはゆったりとした空間が感じられ、自然で和やかな雰囲気が漂う。
画面下部正面に香炉、その左右に胡跪あるいは胡坐する小供養菩薩を配する形式が、初めて現れ、仏前の空間が深まると同時に、上部の双樹や飛天と呼応している。こうした各モチーフの有機的でかつ左右対称性を守りながらも均整のとれた配置、空間性豊かな構図感覚、菩薩たちの、痩身で若々しい姿態、控えめな装身具、清爽淡雅な色調等々、清新の気風にみちたこの一幅の画面は、まさに新時代の到来を告げるものといえよう。
画面は、土色下地で、各尊像の肉身色は白色(一部黒灰色に変色)、仏のみを細勁な濃墨線で、菩薩は淡墨線で描き起こし、肉身部の隈取りは施さない。菩薩の天衣や、右端の菩薩が捧げるガラス鉢などに透明感の表出を意図しながら、第五七窟仏説法図に見られる洗練された表現域までには達し得ず、着衣も無文様であるなど初期の素朴さも魅力の一つと言えよう。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念

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