考古用語辞典 A-Words

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莫高窟第七一窟  2008年09月29日(月)更新

莫高窟第七一窟
【和:ばっこうくつだい七一くつ
【中:Mo gao ku di 71 ku
隋・唐・五代|彫刻・書画>莫高窟第七一窟

壁画 阿弥陀浄土図断片
土壁着色
縦87.5 横178.5
初唐
エルミタージュ美術館
 本壁画断片も敦煌からのオルデンブルグの収集品である。秋山光和氏が、『仏教芸術』第百号(昭和五十年二月)にカラー図版を掲載し、詳細な調査報告をされたが、当時原所在窟不明のままに、様式的な観点から三三五窟や三二九窟に近い初唐窟からのものと判定された。 
北壁阿弥陀浄土図の左下部に、本壁画断片の大きさにほぼ該当する欠損箇所があり、図様的にもその浄土図の構図の一部をなすことが確認された。壁画の欠損箇所は右下部分にも認められ、なんらかの理由により画面下部が不規則な断片として剥離していたのを、オルデンブルグが採集したのであろう。図は現在三面に分けられているが、 一続きの画面で、この第七一窟北壁阿弥陀土図の下方左半にあたり、樹下で蓮華座に坐す如來と両脇の立菩薩から成る三尊が描かれ、その上部にはこの断片の上の画面、すなわち宝冠に化仏をつけた観音菩薩のいる露台の宝相華文をあしらった側面と、その間の溝状の生池がみえる。右方下部は、奏楽菩薩五体がならぶ。左二体は横笛・竪笛を奏でており上半身がみえるが、続く三体は頭部のみで楽器は不明である。その上は宝池で蓮華の花が開いて往生者が姿を現した蓮華化生が四つ認められ、脇に添えられた短冊形に右から「上品下品」「中品中生」「下品中生」「下品下生」と記されており、九品往生の一部を表わしている。最上部には、この浄上図の中心である華座段の露台の側面がわずかにみえ、その華座段の露台の一部が前に張り出してそこに新生菩薩が本尊阿彌陀如来と対面している、その張り出した露台の一部が右上端にみえる。したがってこの断片は、阿弥陀浄土図の左下、宝池の一部、左右の樹下会の内の左、および舞楽会の奏楽菩薩の左半分にあたる。
諸尊の肌色にはほとんど変色はみられず、やや抑揚のある柔軟な墨線でしっかりと面貌体駆が描き出されている。菩薩に基線を主として用いるのはこの窟壁画に共通の技法である。また樹下会の二菩薩のように裳を透かして脚をみせるのは敦煌石窟初唐期の菩薩の常套的表現で、法隆寺金堂壁画の菩薩にも共通する。 ‐
この阿弥陀浄土図全体の景観構成は窟内写真にみられるように、初唐時代の浄土図形成の過渡的様相をよく伝えるもので、第三二一窟図に近いがそれよりは楼閣の界画的表現等々により進んだものがあり、全体として垂拱二年(六八六)の第三三五窟壁画に近い様式を持っている。中尊のいる蓮座段を極端に俯聴視して描き、その露台上にこまやかな文様を施した磚を敷きつめているが、これは本浄土図独自の特徴であろう。出所:『砂漠の美術館-永遠なる敦煌』中国敦煌研究院設立50周年記念

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