考古用語辞典 A-Words

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金剛場陀羅尼経巻第一 2009年3月12日更新

金剛場陀羅尼経巻第一
【和:こんごうじょうだらにきょうかん
【中:Jin gang zhang tuo luo ni jing jian
彫刻・書画|>金剛場陀羅尼経巻第一

一巻 紙本墨書
縦二六・一 全長七一・一
飛鳥時代・天武天皇十五年(六八六)
文化庁
 「金剛場陀羅尼経」は隋の闍那崛多が漢訳した雑密の経典。本巻の制作背景として、巻末の発願文から、教化僧宝林を導師とした川内国志貴評の仏教信者が、七世父母および一切衆生のために写経事業を発願し、その善行によって浄土へ往生し悟り(正覚)をなすことを祈念したものと知られる。
 その書は、腰が高く背勢の楷書で、筆致にやや隷意を漂わせつつ、柔軟さを秘めた美しさを有する。初唐の三大家として名高い欧陽詢(五五七-六四一)あるいはその子欧陽通の書法二例に「道因法師碑」龍朔三年〈六六三〉)の影響がみてとれ、長谷寺の「銅板法華説指図」(天武天皇十五年〈六八六〉)の銘文との酷似が指摘される。文献上、わが国最古の写経事業は、天武天皇二年(六七三)に飛鳥の川原寺で行なわれた一切経書写が知られるが、本巻はこれにそう遠くない時期の制作であり、示唆に富む。さらに、写経という行為と一体化した本格的な書法受容の胎動を伝え、かつ、高い次元での中国書法の受容を物語る遺品として、日本書道史上の意義は計りしれない。なお、巻頭と紙背には「法隆寺一切経」の黒印が捺され、もとは法隆寺に伝来したことが分かる。日本で書写された最古の写経として、この上なく貴重な遺巻である。
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