考古用語辞典 A-Words

時代別順

旧石器時代
新石器時代
神話時代
殷・周時代
春秋戦国
秦・漢・三国
晋・南北朝
隋・唐・五代
宋・遼・金・元
明・清

分野別順

基本用語
青銅器
陶磁器
金銀・玉器
石器・ガラス
彫刻・書画
絹・衣類
建造物・遺跡・墓
歴史名城
歴史人物
研究機関
研究者
面白テーマ

印の歴史 2009年7月8日更新

印の歴史

【和:いんのれきし
【中:Yin de li shi
彫刻・書画|基本用語|>印の歴史

文字、記号を刻することはかなり古くからあっただろう。新石器時代の後期遺跡である西安の半坡に刻号陶片がある。 一九六九年、 山東省大汶口出土の尖底壷には「日月山」と思われる図象文字がある。
殷代後半期の河南省安陽の小屯からは数多くの亀甲や獣骨に刻した文字(甲骨文)が発掘されているし、伴出した鐘鼎彜器といわれる青銅器には銘文(鐘鼎文)が鋳出されている。これは鋳型を作った上で青銅を流しこむから鋳型の文字は刻したものである。
殷代の石刻文字として、 一九七六年、河南省安陽婦好墓出土の石磬刻字(妊冉入石の四字)がある。中国における石刻文字の初例である。
印章として方形(円形もあるが)の枠取りの中に文字を刻した(陰文。陽文)最古の例としては殷墟から出土した殷銶がある。
盛んに行われるようになったのは東周の春秋戦国時代からである。群雄が割拠し、戦乱に明け暮れた時代、王侯部将の階級制の成立、命令伝達、軍功褒賞などから文書(木・竹簡、帛)に封印をしたり、印綬を与えるなどの必要から生れたのだろう。周―泰代のものは鋳印が多い。周秦古銶と言われる。またこのころの陶器類に印を押したものがある。生産地を表すものだろうと言われているが明らかでない。古匋文という、陶器の軟らかいうちに印を押したのであろうが陶印なのか銅印なのかわからない。
秦・漢代になって法治制が確立するに従って印璽は制理化されてくる。皇帝は玉、王は金銀となり、臣下は銅であった。鑿印が主となり陰文である。封印すると陽文に表れるからである。機密文書(木簡)には上下に封皮に当る木を添え紐で縛る。封木には縄の当る筋や結び目を入れる穴があけてある。結んだ後この穴に泥を流しこみ、半乾きのとき封印を押す。この遺品が封泥である。印は紐で携帯した。
漢代の銅印は象書体を印面に巧みに構成して配字して、刀刻の技も冴えていて清朝以来篆刻の模範とされるに至った。秦代の小篆(秦篆)とは異なるところがあるので、膠篆(印篆)などと区別していたが、現代の象刻はこれにこだわらず、古文などをも取り入れるようになっている。
魏・晋・南北朝から隋・唐と印は続くが、紙の発達につれ、紙面に押すようになり、携帯の要がなくなり官庁に備えつけることになる。大型化する。印文に装飾化があらわれ、漢代の良さが失われ別趣を持つ。 宋代になると殷・周の古銅器から金文、石文などを尊重し、金石学が起こり、周・奏・漢の古印も注目された。石を材として印を刻したのは元の王冕だという。
王冕(一三三五―一四〇七)
字は元章。煮石山農と号す。浙江省会稽の人である。画家として知られている。花乳石を用いて印を刻した。一説には青田の澄光凍であるとも言われている。
明代後期に文徴明の長男の文彭が石印材による篆刻に新生面を開き、続いて末期に何震が秀れた業績を示し、この二人によって文人の教養として詩文・書画と並ぶ位置づけの基礎がつくられたと言える。
文彰(一四九八―一五七三)
字を寿承。三橋と号した。印材は牙が主であったのを石印材にかえ、石印の芸術性を開拓した。三橋と散した印は信じ難い程散見する。
何震(生没年未詳)
字は主臣。号は雪漁、長卿。何雪漁として知られる。文三橋に学び石印の刻技では文と並び称せられた。
これに呼応するかのように青田、寿山、昌化などの各地から良材が産出した。田黄、鷄血、澄光凍、艾葉緑などの秀れた材は当時既に採掘され尽したという。清朝の乾隆以後になると文人象刻は極盛期に入り多くの名家が輩出した。
丁敬身(一六九五―一七六五)
蒋山堂(一七四三―一七九五)
黄 易(一七四四―一八〇ニ)
鄧完白(一七四三―一八〇五)
陳鴻寿(一七六八―一八ニニ)
趙次閑(一七八一―一八六〇)
銭叔蓋(?―一八六〇)
胡鼻山(一八一七―一八六ニ)
呉譲之(一七九九―一八七〇)
趙之謙(一八二九―一八八四)
徐三庚(一八二六―一八九〇)
呉昌碩(一八四四―一九二七)
斉白石(一八六〇-一九五七)
石印材による刻印にそれぞれの輝かしい業蹟を残し、多くの印譜にその作品が収録されている。
現代では、篆刻は書道の一分野として、展覧会の中に座を占めている。それと共に作家の印を鑑賞することにもなり、印譜刊行も盛んである。代表として鄧散木がいる。出所:『文房古玩事典』宇野雪村
関連用語:

Copyright 2006 abc0120 All rights reserved.