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釈迦牟尼仏陀 2009年9月20日更新
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西チベットまたはチベット中央部
11世紀中期-12世紀
真鍮;螺髪部に青い顔料が残る、遺骨封入
高40.6cm
ツィンマーマン・ファミリー・コレクション
本像は、力強さと優雅な気品を備えた傑作で、我々の歴史上の仏陀をあらわした、数少ない早期のチベット彫刻の素晴しい作例である。釈迦牟尼の肖像の中でも、最も重要でよく知られている、ブッダガヤの菩提樹の下で覚りを開いたときの姿をあらわしているものである。肩幅が広く、薄く微妙に筋肉が盛り上がり、ウエストを細くした、非常に釣り合いがよくとれた彫像である。若々しい活力と、抑制のきいた沈着さとが合わせて表現され、仏陀が覚りを開いた瞬間の表現にふさわしい。どの隆起にもゆるみがなく、体のあらゆる部分から内なる生気があふれて出ている。首には美の印である3本の線(三道)が刻まれており、曲線でおだやかにかたちづくられた、丸く晴れやかな明るい顔が、知と安心を示している。
まるで肌と変わらぬように体に密着した衣、特に少し盛り上がった縁の部分の波打った曲線が、像の生気をさらに強め高めている。この縁には、2本の線がジグザグの模様に軽く刻まれており、ゆったりとしながらも緊張感を含んだ絶妙のバランスを保って、胸部から足や腕へとのびている。この衣の縁が、重力を大きく無視して、左腕をはるかはなれて宙に舞って楕円の弧を描いており、像の各所に見られる大小の放物線状の形態を見事に補っている。
本像は、10-11世紀のカシミールとパーラ朝のインド彫刻に起源があるとはいえ、チベット美術の特徴である、あたたかく無垢な姿を保っており、それはパーラ美術の鋭い洗練やカシミールの作品の豊かな美とは異なるものである。5世紀のインドのグプタ朝期に完成した有名なサールナート様式を踏襲して、パーラ朝期(8-12世紀)の仏教彫刻に復興された様式の、その力強く実りの多い伝統とはまた別の新鮮な解釈を本像は示している。 トゥッチにより報告された(Tucci,1973,fig.155,12-13世紀の作とされている)、西チベット、グゲのルク寺の初期の彫刻のいくつかと類似しているので、全般的には西チベット地方に属すると示唆できる。明らかに10-11世紀のパーラ彫刻を踏襲していることから、11世紀中期頃か少しのちという制作年代を指摘できる。体の形、直線的な緊張感、強く豊満な顔立ちは、中央チベットの、1081-1093年の作とされるダタン(ダナン)寺の壁画の仏陀像の様式とも関係があり、このことからも、本像の制作年代をほぼ同時期に位置付けることができるが、同時にそのことから、地域的には、チベット中央部に由来する可能性も示唆されるのである。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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