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阿羅漢カナカヴァトゥサ 2009年9月25日更新
チベット中央部
16世紀中期
綿布着色
129.5×52.1cm
シェリー&ドナルド・ルビン・コレクション
この神話上の阿羅漢は、十六羅漢のひとりで、おそらくカナカヴァトゥサであり、通常、教えへの感謝の印として龍神(ナーガ)から捧げられた、数珠と宝石にこでは宝石を入れた鉢)を持つ姿に描かれる。阿羅漢は、茶色の体に、明るい赤色で白い裏地のついた細かく波打つ衣を身にまとい、精細に描かれた生き生きとした表情をして、堂々とした風采である。白い丸い光背が頭を囲み、彼の頭部への注意をよりうながし、赤い縁取りのある葡萄唐花文様が細かく描かれた白い敷物が、体と衣を引き立てている。赤い房飾りと黄色と緑色の木の葉飾りを施した、意匠を凝らした天蓋が、形と色をさらに対照的に引き立たせており、同時に、この珍しい縦長のタンカの上下の部分は、空と明るい緑色の地面の色而も広くなっていて、おそらく、サキャ派のラマ、仏陀、執金剛のラマ(ヴァジュラダラ)、そして大成就者ヴィルーパが、赤い雲の真上に浮かんでいる。前景には、阿羅漢の前に供物台があり、さまざまな施主たちが、左右から供物を捧げながら近付いている。中央部には、青色の衣を着た王族の姿が、壁に囲まれた囲いの中にあって、多くの従者を従えており、前を向き中央の巨大な阿羅漢を肩越しに見上げている。これは普通のパトロン以上の何かではなかろうかと気付かれるだろうが、ここで示唆されるのは、阿羅漢の教えを受けた俗人の支配者であり法師でありパトロンであり、ヴィルーパとサキャ派と関係があるということである。簡素な風景と、適度な自然主義が、16世紀中期の中央部の絵画にあらわれた変化を映している。このタンカは、16世紀中期のサキャ派に見られる、阿羅漢図の様々なスタイルを代表する重要な作例である。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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