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観音 2009年9月28日更新

観音

【和:
【中:
面白テーマ|彫刻・書画|>観音

西チベット
11世紀後期-12世紀前期
青銅;銅・銀象嵌
高55.8cm
ロバート・ハットフィールド・エルスワース・コレクション
観音(アヴァローキテーシュヴァラ)は、大悲の菩薩である。衆生を救済するというその誓願は、仏典によると、想像も及ばない程広いという。彼の真言は、「オーム・マニ・パドメー・フーム」(オーム、宝珠と蓮華よ、幸いなれ)で、彼は、苦しみから衆生を救うための不休の追求をしながら、世界のあらゆる領域へ旅をするのである。彼の経典のひとつである宝函荘厳経(カランダビューハ)では、彼は実際、ヤマの地獄におりていく。千手の指からは、魔法の水があふれだし、溶け出した鉄の炎を冷ましたという。悲華経(カルナープンダリーカ)に記されている通り、観音がチベット人を自由に素直にし、暴力的な道に背を向け、粗野で野蛮な土地を幸せに満ちた明るい土地に変えるために、特別の誓願を行ったということを、チベット人は信じている。共にあらわされる女尊は、ターラーとブリクティと、そして観音の中でも忿怒形をする馬頭(ハヤグリーヴァ)で、そして、他の多くの像と同じく、この菩薩はおそらく、大乗仏教の中で、最も一般的で広く愛されている像であろう。
 このブロンズ像は、姿の良い、割合大きな立像である。その冠に、阿弥陀仏の小像が見られること、そして満開の蓮華を持っていることから、観音であると判断できる。インドの流儀で、蓮華は台座から立ち上がり、左手で軽く支えている。右手は、冠のように曲げられており、衆生を安慰させる印、施無畏印を結んでいる。本像では、アンテロープ(羚羊)の皮を着て、胸部の辺りで結んだ姿にあらわされている。これは前面に結び目があり、左肩にかかっている獣皮と結ばれている。その力強い身ぶりとともに、アンテロープの皮は、優雅な、瑜伽行者(ヒンドゥーの瑜伽の神、シヴァといくぶん似ている)としての禁欲的な性質を暗示した菩薩に、少し野性昧を加えている。観音が身に付けている宝冠と宝石は、菩薩に通例のものであり、また、長く二重の鎖は、金属製の枠のように、肩から足首まで像を囲んでいる。宝冠の中央と首飾りの中央にある穴は、宝石が当初そこに埋め込まれていたことを示している。下の方の衣には、花のデザインの明るい文様が彫り込まれ、幅の狭い二重の紐でシンプルに結ばれている。それは体に密着し、縁にジグザグの製を刻んで足の間に垂れているが、これはこの時代の像に典型的なものである。
 こうしたスタイルから、本像は西チベットから出たものであることが明らかで、おそらく11世紀後半から12世紀前期に位置付けられよう。カシミールとヒマチャルプラデシ型の彫刻のスタイルをとった部分が目立っているとしても、西チベットの仏師によって制作されたという可能性は高いと思われる。この大胆な力強さと真っ直ぐで直接的な雰囲気は、カシミールの典型作のようないくぶん素朴で澱みない洗練とは異なる。堅く、筋骨たくましい体と釣り合わない長い胴体は、一般的に、西チベットの特徴である。顔のはっきりとした直線的な線、変わったプロポーション、そして大きな長方形の頭は、何か奇怪である。非常に大きな目と、幅広の少しほほ笑みを浮かべた銅製の唇が、魅惑的な強さを加えている。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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