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大成就者シヤヴァリーパ・ダーリカパ 2009年10月3日更新
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東チベット
16世紀後期
綿布着色
65.5×38.1cm
ジョン・ギルモア・フォード・コレクション
シャヴァリーパはカモシカの狩人であったが、観音に、彼の道が誤っていることを教えられた。観音は、彼の前に別の狩人として現れ、彼に鹿狩りの競争を挑んだ。観音は、その神通力で、1本の矢で500頭の鹿を射殺して、シャヴァリーパを驚愕させた。そこで、観音は、シャヴァリーパとその妻に、彼らが職業的に殺生していたため地獄に落ちている様子を見せた。こうして彼らの宗教心が刺激され、観音は、彼らにパラマスッカ・チャクラサンヴァラ(勝楽輪制)の曼荼羅を授けた。その後、シャヴァリーパは動物の殺生を止め、12年の間、タントラの瑜伽を修習した。最終的に、彼は、生きているうちに成仏した。
彼はまた、孔雀の羽を身につけている者とも呼ばれているので、この絵の中でも、彼の後ろで揺れ動いている大きな孔雀の羽のケープを着けて描かれており、彼は、弓を持ち、頭を先にして岩に飛び込んで逃げようとしているカモシカを指さしながら空中で踊っているかのようである。彼は、かぎ鼻で、革の膝当てのあるビックリした脚絆を着けたやや思いがけない姿をしている。その下には、おそらく改心する前の彼自身を表している狩人がおり、殺した黒いカモシカを担いでいて、矢筒をもった妻を同伴している。飛び上がっている鹿の上には、2羽の孔雀が枝に止まっており、金剛薩埵の像が傾いている青い岩から光を放っている。
下の場面は、大成就者ダーリカパを示している。彼は王であったが、大成就者ルーイーパに出会ってから、王国を捨てて、その弟子となった。その修行の過程で、彼は寺の第一の踊り手に売られ、12年の間、その奴隷であった。ある晩、踊り手、ダーリマーは、彼が空中に浮いている王座に座って、タントラの心の技法を説いているのを見た。彼女は、彼を召使いにしていたことを謝り、すぐに彼の弟子となった。彼の名前のダーリカパは、彼がこの有名な踊り手の召使いであったことから来ている。彼はここで、顎髭と王冠を着けて描かれている。右手には孔雀の羽と金剛杵を持ち、左手には鈴を持っている。彼は、堂々としており、龍の模様のある黒いマントを身につけている。オレンジ色の巻き衣が、彼とその濃紺の王座の一部に広が.っている。その座は格子棚のようなベッドに見え、おそらく彼がダーリマーの召使いの部屋で寝ていた簡易ベッドであろう。その後ろには、布の覆いと巻き貝がある(口のない)勝利の壺と、儀式のときに聖水を注ぐことに使われる(口のある)儀式の壺が置かれている。おそらくはダーリマーであろうが、服をだらしなく身につけた女性が彼の後ろにいる。彼女は、内的な施物(変質された身体の要素)を積み上げた髑髏杯を持っており、象徴的に、彼女が彼の瑜伽の伴侶であることを示している。こうした二つの場面は、ほとんど奥行きがなく、境界線のはっきりしない風景の中に置かれている。人物と風景の要素のどちらも、比較的大きく、近い距離から見られている。力強く、曲線的な人物の生き生きとした美しさは、岩や木や水を型どっている興味深い形や繊細な色と調和している。その形式張らない高度な自然主義には、それぞれの要素に独特な違いがあり、岩が強く様式化していて、明代後期の絵画と関係がある。これによって、この作品が16世紀後期の作であると考えられる。
同じセットのものである可能性がある別の大成就者の絵画が、フォード・コレクションにある。これらは、東チベットの絵画の流派の初期の例で、16世紀後期まで勢いがあったらしく、特に、中国の風景の様式との類似が注目される。
出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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