考古用語辞典 A-Words

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毘沙門天 2009年10月4日更新

毘沙門天

【和:
【中:
面白テーマ|彫刻・書画|>毘沙門天

チベット中央部
1400年頃またはそれ以前
綿布着色
81.3×73.7cm
個人蔵
大護法尊、毘沙門天、北方の富の守護神が、魅力的な青色の雪獅子にまたがり、戟と、丸々と太って宝石を吐き出すマングース(強欲の蛇を征服するということから、寛大さを象徴する)を持って座っている。丸々と太った体は、幅広く、見事な金鎖甲を着た姿をしていて、大きく四角い顔は、微笑んでいる。その大きく丸い目は、赤く縁取られているが、優しさをたたえている。大きな雪獅子は、毘沙門天の頭光が反映して美しい水色のたてがみをしていて、雲と周囲の尊像の間を閑歩しながら、大きな頭を主尊の方に向けている。すべてのものが、構造的あるいは芸術的な問題もなく、画面上を渦巻いているようであり、したがって、本図には密集した非常に二次元的な表面ながら、ある程度の流動性が感じられる。
 馬の背に乗る大きな諸尊像が毘沙門天に従っている。彼等は八神将である。白色のジャンバラ(東)、黄色のプールナバドラ(南)、赤色のマニバドラ(西)、黒のクベーラ(北)、黄色のサンプラジャーナ(南東)、黒のグフヤタナ(南西)、鮮黄色のパンチカイエ(北西)、白のピチクンダリー(北東)である。それぞれが名前と定められた身色を持っていて、マングースを左手に持ち、右手に別の比定の決め手になるシンボル、持物を持っている。これらの神将の周りに、その武器が散らばっている。また様々な形の雲の間に、八つの幸運のシンボル(車輪、魚、飾り結び、花瓶、旗印、宝石、巻貝、蓮華)と、七つの王室の必需品(宝輪、王妃、念珠、聖職者、象、馬、そして神将)がある。左側には、茶色の肥満した、笑っている像が見られ、見たところバシャン(布袋)のようであるが、上機嫌で富の袋の中身を空けており、それが、魔法のおもちゃのように、空と下方の諸尊上の至る所へと降っている。  個々の像は、きびきびと歯切れよく描かれている。彩色は平面的かつ鮮明で、濃い群青の色調が全体を支配している。心地よいトルコ石の青緑色が、この絵に楽しげな気分をつくっている。トルコ石の色は、一般的にチベット美術においては、数世紀のちになるまでは控え目に用いられる。ここでは、早期の作品としては極めて惜しみなく用いられており、本図に特別な美しさをもたらしている。
 全般的に、この様式は、15世紀前期の中央部の美術に最も密接な関連があるようで、特に15世紀第2四半期、ギャンツェのクンブム寺の壁画でよく知られている様式に近い。 出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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