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馬頭 2009年10月6日更新
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おそらく西チベット
12世紀後期-13世紀前期
青銅;金泥、彩色
高34.3cm
ツィンマーマン・ファミリー・コレクション
馬頭(ハヤグリーヴァ)はチベット仏教における主要な守護尊のひとつである。とりわけ最初期のニンマ派で好まれた。馬頭は観音の忿怒の姿であると考えられている。恐ろしい慈悲の守護尊で、それゆえにパドマサンバヴァの変化とも結びつけられる。馬頭の元来の真言は『秘密集会タントラ』にあらわれる「オーム・フリー・ペーメ・サンバヴァ・フーム」である。様々な形があり、しばしば三面六臂四足であったり、大きな翼を持つこともある。忿怒尊の頭上に馬の頭を付けるのが標識であり、ゆえに馬頭とよばれる。馬の頭は大きくいななき、その音は、すべての実在性の誤った外観を貫くといい、輝く自由の実在を示している。
ここでは馬頭は一面二臂二足であらわされ、それは、瑜伽行者が黙想期間と儀礼の繰り返しの間に一体感をもつ姿である。すべてが恐ろしい姿であらわされる。険しい顔で睨み付けるような眼、牙を出して吼えるような口、戦士の攻撃的な姿勢、内なるエネルギーに膨れた腹、右手は剣を威嚇するように振り上げ、左手は忿怒拳をとり、生きた蛇を瓔珞とする。この恐ろしい様相は、内なる利己的な耽溺や外なる障害に打ち勝てるようにする慈悲の荒々しい裁定をあらわしている。真実を見通す智慧に転化した怒りは、根深い誤った見識や、強欲、憎悪、傲慢、嫉妬といった不幸や苦難の原因となる嗜癖に打ち勝つために不可欠である。全体として子供っぽい純真さの中に、馬頭の恐ろしい性質を表すことによって、この作例は、馬頭の愛と狂暴性の統合を示しているのである。
この彫像は、チベット彫刻におけるこの重要な尊像の最も早い作例のひとつである。 12世紀後半から13世紀前期頃に制作年をおくことができるが、制作地域を特定するのは困難である。平板な顔と硬い作風や、ラカンソマの作例と近似することなどから、西チベットのものと考えられる。着衣の文様や衣の縁のスタイルは、12世紀後期頃の中央部の彫刻や絵画に見られる。充実したなめらかな量感は、蛇の瓔珞や腰衣のふちの抑制されたカーブと一体となっている。面白いことにこの初期の馬頭には、宝冠や髑髏が見あたらない。装飾は簡素なものである。鍍金と彩色は後補である。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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