時代別順
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四臂金剛手 2009年10月7日更新
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チベット中央部
17世紀前半
綿布着色
96.5×64.8cm
個人蔵
力強い忿怒尊金剛手が、戦いの構えで立つ。足下には白亜色の四臂の神を踏みつける。踏みつけられた神は右の二手にダマル太鼓と金剛包丁を持ち、左の二手に三叉戟を持つ。主尊は、トゥッチによってブータダマラ金剛手に同定されている。これは身色はしばしば暗青色なのだが、その姿勢や持物から判断したものである。金副手はここでは覚りの実現への道に障害となるものを除去する者として立ちはだかる。大きな角張った顔やごつごつとした手足、量感ある体躯は、白金色である。忿怒の形相は巧みに描かれ、力士のような圧倒的な威圧感を発散させる。外側の手は右手は金剛杵、左手には羂索を持つ。内側の手は、正面で金剛吽迦羅印という三界に打ち勝つことを示す印相をとる。赤紫色の縄状の逆立てた炎髪の束が揺らめき、異様な渦を巻く火焔光背の濃淡のない薔薇色と一体化している。この珍しい唐草文様に似た神秘的な火焔文の光背は、構成を支配している。火焔光の中には、ちょうど金剛手の炎髪の上に小さく最高仏である青色の阿閦が座る。阿閦は、怒りを突竟の実在(真如)の完成である智慧に変容させることを象徴している。かすかに雲文のある白い天衣を円形に近い形でひるがえらせ、上半身部分に強い曲線構成を作り出している。暗緑色の天衣の端は足下に垂れ、下半身部分の輪郭をつくっている。肉身の白色に対して、暗青緑、橙、赤紫色を中心とした装飾が、美しい調和を作り出している。それらに加えて、恐ろしい装飾もある。五髑髏冠や生首の首飾り、太い青緑色の水玉模様の蛇がゆったりと体に巻きつき、白い小さな蛇は首に巻きつく。大きな瓔珞を頸や腰に付ける。眉や口髭、顎髭、髪は地獄の炎のように描かれる。大きな口を開けて歯をむき出し舌を丸め鼻にしわを寄せてうなる。血走った三眼は、険しく睨み付ける。顔は完璧に熟達した力で描かれ、赤い線は尊像の熱く明るい様相を高めている。
簡素な暗緑色の地面に囲まれた青い湖に、青い山と垂直に切り立った岩が、金剛手の橙と赤紫色の蓮台を支えている。両側には部分的に光背の背後に隠れて、大成就者たちと、2本の樹木がある。そのスタイルは光背同様通常と異なる。
主尊の周囲に左右対称に配されているのは、金剛手の眷属で、無地の緑の地面と時折見られる岩、暗青色の空、輝く白い雲、上端の赤紫色と青緑の気流のような背景のなかに配されている。
中央の垂直な中心線には、上から順に、一切智大日(四面大日、無知の根絶を支援する仏)、ガチョウに乗る偉大なる神梵天、光背の中にいる暗青色の阿閦、主尊の台座の下で白象にのる帝釈天、宝珠をのせた供物台、黒猪に乗る坐像(おそらくヴィシュヌ)の曜tになる。一番上端の列の人日の両側は、五仏の残りの四仏で2体ずつ、四仏母が二人一組で出面両端にいる。四天王は外側の四隅にあらわされる(上から2列目の両端と下から4列目の両端)。8体の龍女(ナーギニー)は蛇の宝冠をつけ下半身は蛇で、帝釈天の両脇の湖から出ている。主尊の周囲に周期的に配される獣にのった尊格は、帝釈天の住処の世界の尊像である。数多くの修行する成就者の列が画面全体に配される。主尊の線描の強さはチベット中央部の17世紀のスタイルに関連づけられる。複合的な様式は、この作品が中央部のものであることを示す。写実的で簡素で力強い描写は、17世紀前半のものとおもわれる。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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