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プトゥン・リンチェントゥプ 2009年10月9日更新

プトゥン・リンチェントゥプ

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面白テーマ|彫刻・書画|>プトゥン・リンチェントゥプ

チベット、ツァン地方、シャル寺
1世紀後期、キェンラブ・ジャムヤン画
綿布着色
88×61.6cm
サンフランシスコ・アジア美術館
このプトゥン・リンチェントゥプの肖像画は、その芸術的価値と歴史的重要性において傑出した作品である。プトゥン・リンポチェ(1290-1364)はシャル寺の座主であった。シャル寺はツァンのタシルンポ寺の南東にあった。この特定の宗派に属さない寺は、規模こそ小さいものの、特徴ある注目すべき寺である。この寺は、もともと11世紀にシャルの王子によって建設され、1333年にプトゥン・リンポチェが住持であったときに改修された。プトゥンは特筆すべき人物であり、シャル寺の修復は彼の業績のほんの一部に過ぎない。彼はチベットのすべての宗教的文献を校訂し、それらをカンギュル(経・律)とテンギュル(論)と呼ばれる二つの大きな基本的正典へと総合再編することに、その非凡な才能を発揮した。彼自身の著作の対象も仏教のほぼすべての局面に及んでいる。彼のタントラについての論文は、さまざまな曼荼羅群について極めて精密に記述しているので、図像学的体系の基礎をなすものとして、のちの幾世代もの画家たちがこれらの論文に従った。
 このタンカはまさにそのシャル寺から出たものであり、この偉大な祖師を描いた稀少な絵のひとつである。大きなプトゥン・リンポチェの像がこの絵を支配している。彼は精巧な獅子の台座に載った蓮華座の上に座って瞑想している。彼の手は説法印を結び、肩の高さに浮かぶ一対の蓮華の茎を持っており、彼の身体の左側にある紅い蓮華には金剛杵が載り、右側の白い蓮華には金剛鈴が載っている。プトゥン・リンポチェは精巧なラマの衣を着て、黄色い帽子を被っている。緑色の頭光は彼の頭部の後ろで輝き、彼の身体から放射する金の細密な線は、身体全体を包む金色の光背を形作り、それが画面全体の構成において他の部分から彼を区別している。総計58体の像が中央の主尊を取り巻いている。
 このタンカの裏面に記されている奉献の銘文は、歴史的に興味深い重要なものである。チベット絵画において作者は匿名とされるのが原則だが、この絵は絵師の名前が銘文に述べられている稀な例のひとつなのである。のちの高徳ソナム・ギャツオの訳したところに従えば、この絵は画家キェンラブ・ジャムヤンを中心として、数人の弟子たちが参加して制作された。施主はマンガ・ラトナである。プトゥン・リンポチェの創立したシャル派が布教する教えにおける歴代の祖師たちや神々、護法尊などを描く11点からなる作品のうち、このタンカが一番目の作品であることも銘文には記されている。また施主と画家の両者が、この絵の利益によってシャル派の教義が広く普及するようにとの願いをあらわす。さらに銘文の上方には、このタンカを奉献した名前がわからない二人のラマの手形が捺されている。
 このタンカには年紀はなく、施主や作者についても名前以外のことはわからない。しかしながら、5世と6世のダライラマが描かれている点は、この絵の成立時期が17世紀後期であることを示唆する。崇敬の印として、吉兆を示すものを持った同時代の宗教的人物を含めて表す慣習化があり、この場合、5世ダライラマは法輪を、6世は長寿の瓶を持ってあらわされている。銘文から示唆されるとおり、この重要なタンカは、絵師キェンラブ・ジャムヤンによって制作されたと考えられる11点の作品群のうちの第一番目にあたるものである。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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