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赤色ヤマーリ曼荼羅 2009年10月13日更新
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チベット中央部
14世紀後期
綿布着色
61×53.4cm
ツィンマーマン・ファミリー・コレクション
この小品は単に非常に見事な完成度を示すだけでなく、非常に重要な基準作例で、14世紀後期のある地域の画派の特徴と編年のための特徴をもっている。墨で書かれた銘記には「チャンプクパの聖者、ラマ、ケズン・クンガ・レクパの瞑想に用いられた」とある。クンガ・レクパは14世紀後半の人物で、偉大な祖師ツォンカパ(1357-1419)の師のひとりである。個人の瞑想用に用いられたタンカであることから、彼の存命中に作られたものと考えられる。また、このラマが生活していたツァン地方で制作されたとも思われる。おそらく、画面左下の人物が供養するクンガ・レクパをあらわすのであろう。
この曼荼羅は、赤色ヤマーりの国土の本質である。神の宮殿を一目で見られるように描かれていて、実際の修法では門より入り、さまざまな部屋に入り、そして最後に赤色ヤマーりとその神妃がいる中央の間に達することを観想する。そこでは、赤色ヤマーりと神妃は、合体の至福にあり、覚りの境地における智慧と慈悲を体現する。宮殿は四部分に分かれ、それぞれが異なる色(東一白、南一黄、西一赤、北一緑)であらわされる。それぞれに色の異なるヤマーリ父母仏がいる。四方の神々の部屋の部分にはそれぞれ独尊の女尊があらわされる。
南東に、金剛包丁と髑髏杯を持った白色のチャルチャー、南西に、金剛杵と髑髏杯を持った暗青色の豚面のヴァーラーヒー、北西に、肉切り包丁と鉢を持つ赤色の弁財天(サラスヴァティー)、北東に、金剛包丁と鉢を持つ緑色のガウリーが、それぞれいる。護法尊ヤマーンタカ父母仏がそれぞれの門に小さくあらわされる。四角形の区画には邪鬼が、水瓶や宝石で出来た花綱を持って黒い地の部分や青い壁、城壁の頂上の狭間にあらわされる。門には、赤い摩羯魚の頭部があり、火焔の先端のようなものを吐き出し、飾られた重層の門の屋根をアーチ形に覆い、巨大な金剛杵のような形であらわされる。最上層の法輪の脇には鹿が一対いる。これはチベットの寺院の屋根の上によく見られる。唐草文が宮殿のある部分の空間を埋め、見事な清明さと活力を引き出している。宮殿の周囲を円環帯で囲み同心円状に、蓮弁、金剛杵、火焔風の唐草文をあらわす。
聖域の外には、濃いモスグリーンの蔓草が絡み合っており、それらは辛子色で縁取られ、桃色の新芽や蕾や花を付けている。ここにはさまざまなタントラの尊格があらわされている。
像のスタイルは、魅力的で明快で、線が支配的であるが、いくつかの場所ではモデリングも見事になされている。墨線は、控えめに用いられているが、堅固だが、やや不自然で鋭利である。この絵はおだやかで簡素だが、チベット絵画の特徴である通常にない強さと大胆さを持っている。明瞭な太い墨線で端の唐草モチーフを縁取り、あたかもレリーフのように浮き立たせている。これは、信頼できる基準作が非常に少ない14世紀後期の年代の分か
る作品として、非常に重要な作例である。ここから、他の作例の編年をすることができ、なチャクラサンヅァラなどが挙げられる、これらはひとつの主要な削減によるものと思われ、14世紀後期のおそらくツァン地方の、たぶん同一の僧院または画派のもとで作られたものであろう。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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