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ミラレパ 2009年10月13日更新
中国様式の伝統
16世紀
象牙彫;金泥
高7.6cm
エルミタージュ美術館、サンクトペテルブルク
ミラレパは、蓮華座の上に敷かれた羚羊の皮のうえに右膝を立てた坐法(遊戯坐)で座り、右手を耳元に置く。ミラレパの形はこの右手の姿勢で簡単に見分けられる。しかし、エルミタージュ美術館蔵の象牙のミラレパ像は、細部に一般的な表現と異なる点もみられる。チベットの図像的伝統では、ミラレパは、左手を膝上に置き、カパーラ(髑髏杯;研究者によってはこれを髑髏杯としない見方もある)。しかし、この像では、左手を台座後方についている。右肩にみられる帯もここではあらわされない。この差異は、単なる制作者の創意によるものでなく、図像的見地からみても重要なことである。あるパターンがあらわれていたようである。
より類似するミラレパの表現は、中国でみられる。一例としては、北京の故宮内宝相楼に見られる。ここでは、有名なチペット行者は、中国でみられる、太鼓腹で笑みを浮かべた弥勒像の形に似せて作られている。エルミタージュ美術館所蔵の象牙のミラレパ像と同じように、羚羊の皮の上に座って台座に左手をついている。ほかの18世紀の中国のミラレパ像の形では、ブリュッセル王立博物館のものが見られる。全体として、このエルミタージュ美術館のミラレパ像は、チベットの様式的伝統のもとにつくられているが、左手を置く位置については、宝相楼のミラレパと同じである。
このようなタイプのミラレパは、太鼓腹の弥勒という中国の原形があるといえよう。様式は、象牙という材質は言うまでもなく、中国起源であることを示している。また、装飾や衣の襞やミラレパの右足の下の花文などは、16世紀の作であることを裏付ける。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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