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ミラレパ 2009年10月13日更新

ミラレパ

【和:
【中:
面白テーマ|彫刻・書画|>ミラレパ

東チベットまたはチベット中央部 17世紀前半
青銅;金泥、彩色
高17.8cm
ロサンゼルス・カウンティ美術館
この美しい彫刻は、気品のある崇高で優美な瑜伽行者をあらわしている。足下には、狩人キワラ・ゴンポ・ドルジェ(チラワ・ワンポ・ドルジェ)とまだらのある鹿と赤い犬が座っている。ミラレパの伝記には、ある日、ミラレパがニィ・シャン・グル・ダ山の巨石の上で瞑想していたときのことを記している。鹿が、犬と狩人に追われて逃げていた。輪廻(生命の生まれ変わりの循環)の連環にとらわれていた三者のため、大いなる慈悲によって目覚め、ミラレパは、鹿に語りかけ、恐れを鎮めた。
  角の鋭き鹿よ、聞きなさい。
  外の世界のものから
  逃げようとするならば
  汝は無明と迷妄から
  自由になる機会はない
 すると、赤いどう猛な猟犬が走り寄って鹿に襲いかかった。しかし、ミラレパは、犬に言った。
  何に遭おうとも、汝がそれを敵と信ずるなら
  汝の心は憎しみと悪しき考えに満ちている。
  汝は牝犬として生まれた悪しきカルマ(業)の
  ゆえに
  つねに飢えに苦しみ、激情にもだえる
  汝が内なる生来の心をとらえようとしなければ
  外の獲物をとらえることに何の利益があろう
  汝の生来の心をとらえるときがきた
  今こそ汝の怒りを捨てるときである
  我とともにここに静かに座れ
 犬はこの言葉に動かされ、鹿と一緒に穏やかに座った。しばらくして狩人がそこにやってきた。走ってきたとき、息切れしそうな呼吸が聞こえるほどで、汗は滝のように流れ、ほとんど息が止まって死にそうであった。猟犬と鹿が行者の脇に座っているのを見て逆上して、ミラレパに対し怒り、弓で彼を射た。しかし、弓は神通力によってそれた。ミラレパは狩人に向かって歌った。
人間の体は宝石のごとくもっとも価値のあるものであると人は言う。
汝には何も価値のあるところがない
悪鬼の容貌をした罪深き者よ!
汝はこの人生の喜びを欲しているが
汝の罪ゆえに汝はそれを得ることはない
しかし、汝がその欲を捨てれば
汝は、おおいなる成就に達するであろう
自らに打つ勝つのは難しい
外の世界に打ち勝っているときには
いま、汝の生来の心に打ち勝て
この鹿を殺すことは汝を喜ばせない
しかし、汝が内なる五毒をころせば
汝のすべての望みは満たされるであろう
外の世界の敵に打ち勝とうとするならば
敵はさらに力を増すことになる
もし生来の心に打つ勝つなら
すべての敵は消える
 狩人は、ミラレパの静寂さに驚き、彼の心に動かされた。彼は、この力ある行者の大いなる信仰に感銘した。彼は、鹿と犬と狩人の外衣と山羊の皮衣と弓矢を差し出し、ミラレパの弟子となった。その後彼は、キィラ・レパー綿の衣をまとった狩人-として知られるようになった。鹿と犬は「永遠に不幸の道から離れた」といい、また、弓矢はチベットとネパールの境にあるニィ・シャン・グル・ダ山の洞穴にあるといわれている。
 細身の美しい体躯のこの像は、自然主義的に表現され、16世紀後期から17世紀前期にかけての美術の流れに合致する。 15世紀前期からのさまざまな様式の特徴が知られているが、その中に、この像に類似する要素が多くある。これらは、ツァン地方の特徴と関連づけられる。しかし、様式の優美さや繊細さに力点を置いた表現は、東チベットにはじまる特徴を示している。そして、それは中国の誇張的な自然主義に近い。頭髪の青い彩色や赤の彩色は、後補と思われる。この彫像は、チベットのミラレパ像のうちでもっとも愛らしいもののひとつである。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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