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ミラレパ・その生涯 2009年10月17日更新
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東チベット
18世紀後期-19世紀前期
綿布着色
83.5×55.5cm
ストックホルム国立民族学博物館
この絵画もミラレパの生涯の一部分を描いたもので、マルパから受けた教えに基づく厳しい修行の場面である。やや中央からずれた位置に大きく描かれたミラレパの姿は、この場面の彼の状況を反映した姿になっている。彼は、灰色の肌で痩せた修行者の姿をしている。早い時期の瞑想の頃に、イラクサのスープだけを食していたためこのような姿になってしまった。
この時期のミラレパの洞窟での生活の場面は、それぞれ土坡によって十文字の対角線状に区切られている。トニー・シュミットによって示された絵の中の物語の展開を要約すると、次のようになる。物語は画面左下からはじまる。この時期にミラレパは、重要な瞑想の時に入ろうとする。彼は、彼の師マルパの家を離れ、自分の故郷に戻った。そこで、母が死んだことと、家族の家と宗教的な本がひどい状態にあると知った。彼は、飢えて食物を請う。さまよい歩いて、彼が叔母のテントに来ると彼は、犬に吠えつかれる(1)。その後に、彼は、叔父の家に行くが、叔父は弓矢で射ようとし、彼は追い立てられる(2)。次に、ミラレパは洞穴で過ごす(3,4)。そこで彼は、後悔した叔母から食料をもらう(3)。叔母は財産を請い、彼はそれを与えた。次の場面は、画面中央左端からはじまる。
洞穴での2年間瞑想している間に、たくさんの狩人と盗賊がやってきた。彼の妹は何年も彼に会ったことがなく彼女自身も物乞いになっていた。そしてミラレパのことを聞いて、彼に会いに行く。画面左上端にミラレパが妹と会う一連の場面が描かれる(6)。ミラレパの妹は彼を見て驚き、幽霊ではないかと思った。彼が裸であることに恐れおののき、後になって衣を持ってくる。彼は手足に衣をかぶせた。ミラレパは妹のこれらの奇妙な服を見せると、裸であることを恥じる必要はなく、悪い考えとおこないを恥じる
べきであると説いて、彼女を改心させようとする。ミラレパが、マルパが別れの際に与えた巻物を開くのはこの時期である。その教えに従い、瞑想を行い、飛ぶ能力を得る(7)。ミラレパは、下で畑を耕している親戚に飛んでいるところを見られている。ミラレパがこの修行期の洞穴を出るときに、鉢を落としてイラクサの鉢があらわれる(8)。明るい緑色が、このタンカの全体の色を占め、より構築的な形を用いている他の画幅とのコントラストをつけている。それぞれの画幅に描かれている小さい人物は、生き生きとして熟達した、明るい色彩によって描かれている。
岩や土坡の表現は、何世紀にもわたる様式の伝統の中でいくぶん形式化しているが、それにもかかわらず、新鮮さや生気や優れた絵の資質をとどめている。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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