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カギュ派ラマ 2009年10月19日更新

カギュ派ラマ

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面白テーマ|彫刻・書画|>カギュ派ラマ

チベット中央部
16世紀後半
綿布着色
53.4×43.2cm
ツィンマーマン・ファミリー・コレクション
この絵画は、ラマの手跡と足跡をあらわす、特別な位をもつ、重要なラマの肖像である。チベットの信者には、仏舎利のように恩恵のあるものであり、ラマの肉体を生きている時のように直接さわるものである。手跡の手のひらと足跡のかかとには、法輪がみられる。これは、このラマが現実の仏陀の生まれ変わり(活仏)と信じられていたことを示している。ラマは、突き出た頬で暗い肌色である。暗青色の椅子に座り、説法印をとる。画面の中にあまり大きく描かれない。大きな金色の手跡と足跡は、絵全体の繊細なスタイルと暗い、押さえ目の色調を圧倒している。
 侍者の像は、左右対称に配置される。主尊の天蓋の上には赤色の金剛法が座す。これは、ヴァジュラヨーギニー(金剛瑜仙女)の神秘の教えに関連するタントラの阿闍梨として、仏形で描かれる。その脇に明るい赤色の光背をつけたラマが4体描かれ、主尊のラマが受け次いだ祖師の系図をあらわしている。主尊と手跡と足跡の高さの位置に赤色阿弥陀を左方に、インドラブーティ形のヴァジュラヨーギニーを右方に置く。主尊の前には、供養台があり、その下方に宝石に囲まれた法輪がある。さらにラマと2人の弟子が左にあり、守護尊がいるが、銘文にシェルマとあるが、ゴンポ・ベルナク、すなわち黒衣の大黒天に似ている。下部には池が描かれ、アヒルが泳いでいる。微妙に自然な陰影を付けたギザギザの暗い色の岩が金色の足跡の背景に描かれる。かろうじて青い岩が手跡の背景にみられる。おそらくこれらは、ラマの足跡や手跡を岩に刻んだ有名なものを、信者たちに思い起こさせるものなのであろう。薄暗い赤色の雲が暗い青空の中にあり、鮮緑色の地面と深青色の空とを区切っている。空には金色の糸のような細い線の雲がひらめく。主尊のラマの背後には金色の果実のついた木がある。木のモチーフを用いるものとしては早いもので、伝統的なスタイルでは、祠堂の後ろに配するものである。ラマの衣は主として赤色で、金色の点が描き込まれる。赤の強いアクセントが薄暗い静かな画面をにぎやかにしている。
 これらの作品との比較において、このタンカは、この時代の絵画における際だった地方的差異があらわれている。西チベットの絵画には自然景に少し似たところがある。一方で同時代の西チベット絵画は、中国絵画の流れに近く、この作品中央部の絵画よりも、より風景や画面分割が用いられている。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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