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外護のヤマ法王 2009年10月27日更新
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チベット中央部
17世紀中期
綿布着色
68.6×45.7cm
ツィンマーマン・ファミリー・コレクション
ヤマ法王(ヤマ・ダルマラージャ)は、頭が水牛の姿をした古代インド神話上の死神の王であり、地獄の門で死者の魂を審判し、従者が臨終に際して迎えに来る。仏教では、文殊が最も恐ろしい神を、護法尊(ダルマ・パーラ)かつ、チベット仏教の実践における主要な守護尊として、支配の許に入れたものである。ヤマを調伏する者である文殊はツォンカパと深いつながりがあるため、とりわけゲルク派では重要な尊格である。ツォンカパの姿が中央部上方に唯一忿怒尊ではない尊像として描かれる。これによってこれがゲルク派の作品と比定できる。
守護尊と護法尊は、外と内と秘密と、時には究竟の形を持つ。外護のヤマは、一般的には、頭部は水牛の姿であらわされる。外部の障害物と向き合い、修行者や寺を干魃や賊やそのほかの不幸から守るために目を見張っている。内護のヤマ法王もいて、こちらは、人面の忿怒形であらわされる。人生において真の魂の障害となる物は、外的な状況ではなく、恐れ、憎しみ、高慢、嫉妬といった内的な汚れである。それゆえ、内護のヤマ法王はそれらを打ち払うために呼び出すものである。感情や精神の守護者である。また、秘密のヤマ法王は生ける物の本能の源に働きかけ、深いポジティブな力を内なる世界から取り出す者である。そして究竟のヤマ法王は、死と対決する者である。死に際して、心は自身が消滅するような体験をするが、無に出会う時、消滅の代わりに無我、すなわち縁起に達する。死は人口であり、心は覚りに向かって開く。
黒色の身を突き出して、雄牛の背中に乗り、ヤマは、髑髏棒と羂索を振りかざす。金髪の神妃チヤームンディーを忿怒の表情で見つめる。妃も身色は黒色で雄牛の腰とヤマの左足に足をかける。
中央の尊像の背後の自然な密集した火焔の塊や凶暴な姿をした従者たちが煙のような雲や白い火焔の中を飛び回っており、この恐ろしい場面が劇的にあらわされている。ヤマの眷十二尊が画面上方の両端からあらわれ、それぞれが異なった象徴物を持ち、さまざまな獣の皮をまとっている。右端の雄牛に乗るのは悪鬼の面を持つ黒色の内護のヤマで、左には赤い水牛面の秘密ヤマ、髑髏杯と宝珠を持つ長命ヤマである。下部には、2体の舞踏
する尊像があり、小さな白人間を自分たちの運命の許に引きずっている。二尊は、それぞれ、カーリーと吉祥天で灰褐色とパロミノのラバに乗る。
絵の中に暗緑色と朱色に荒々しく強い自然さがあらわれており、それが恐らく17世紀後半の制作とみられるラサのデープン寺の壁画に見られる。出所:天空の秘宝チベット密教美術展 2009.09.19更新
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