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ベクツェ 2009年10月29日更新
チベット中央部または東チベット
18世紀後期-19世紀前期
綿布着色
84.5×57.5cm
ェッセン・コレクション
護法導ベクツェは「鎖かたびら」という名とその着衣が示す通り、元来中央アジアの戦闘神であった。夜叉と羅刹女(ラークシャシー)の子であるとされる。ほかの護法尊と違いベクツェは格の低い護法尊と見なされる。完全な解脱に達しておらず、故に仏教徒は彼に安息を求めることは出来ない。しかし、法の実践者と教団の保護を祈願することは出来る。
ベクツェは火焔と煙と、悪鬼のような?属、「8人の刃を持つ者(gri-thog)」に囲まれている。彼らは戦場で死体を切り裂いている。戦闘の姿勢で馬と人間の死体を踏みつける。それらは、血の湖の上に被さるようにしてある蓮台の上に乗る。ベクツェは、画面に比してこぢんまりとあらわされる。赤い顔は、恐ろしい形相をし、厚い飾りのある鎧をまとい、モンゴル風の長靴を履く。右手は剣を振りかざす。剣の束蠍形をしている。弓矢と幡の付いた槍を左の小脇に抱える。左手に人の心臓を持ち、口前に置き、猪のような口でまさに喰らおうとしている。向かって左に狼に乗るソクダクを、右に赤面で人間を喰らう妹ドンマルマを脇に従える。上方左側には、炎を吐いて讃嘆する龍がみえる。上方右側には、山中に建つベクツェの住処である髑髏宮殿マルツェがあり、戦利品である人体の断片で飾られている。上方の場面はこの画像の系譜を示している。ここには赤色の阿弥陀仏の周りに座るゲルク派の4人の高僧があらわされている。
このタンカの陰鬱で動揺した雰囲気は、特に瞑想のために描かれたのではなく、むしろ破壊と死を投影するものである。その儀礼は畏怖を喚起するのではなく、迷いの無分別な生について警告し、憎悪と熱情からの解脱を訴えるものである。チベットでは、ベクツェはもはや戦闘神ではなく平和の瞑想者なのである。出所:天空の秘宝チベット密教美術展
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